■難度の高い『Golden』、高音続きで“肉体的苦闘”の感覚を視聴者が体現

 ただ、この『Golden』は誰もがカラオケで簡単に歌える、といった安易な楽曲ではない。

 その理由として、監督のマギー・カンとクリス・アペルハンスは「ワシントンポスト」(8月13日付電子版)に「『Golden』は極めて難度の高い楽曲であった」としたうえで、「(作曲に参加した)EJAEには彼女が歌える限りの最高音を歌わせたと思う。アーティストが才能と努力のすべてを注ぎ込み、一つの音を出すために肉体的な苦闘を強いられているのを聴いた時に感じる感覚を体現することこそが重要だった」と語っている。

 劇中でも歴代デーモンハンターズの歌は「闇を退ける天性の声」と紹介されている。闇を退けるためにはそれを凌駕する命がけのパワーが必要なのだ。

 人間と悪魔、K-POPアイドルとデーモンハンターズという両方の顔を持つルミが、自分のアイデンティティーとどう向き合い、苦悩の日々をどのように過ごしてきたのか。身体的苦闘を伴う声は、劇中の主人公ルミの「二重のアイデンティティー」の葛藤とも重なり、軍事政権や民主化闘争を経験した韓国近現代史の苦闘とも共鳴する。

『K-POPデーモンハンターズ』と『Golden』の成功は、韓国のローカル文化をグローバル市場へと結びつける“グローカル文化”のパワーを示した核心的な事例として歴史に刻まれるだろう。

●配信情報

Netflix映画『K-POPガールズ!デーモンハンターズ』独占配信中

[2025年/アメリカ/99分]原作:マギー・カン 監督:マギー・カン、クリス・アペルハンス 脚本:ダニヤ・ヒメネス、ハンナ・マクメチャン、マギー・カン、クリス・アペルハンス 制作:ソニー・ピクチャーズ・アニメーション
出演(声優):アーデン・チョー、アン・ヒョソプ、ケン・チョン、イ・ビョンホン、ダニエル・デイ・キム、メイ・ホン、ユ・ジヨン、キム・ユンジン、ジョエル・キム・ブースター、ライザ・コーシー