そんなわけはないと思った。ヤギの臭いはかなり強い。脂肪の部分が臭うだという。肉には脂肪がついてまわる。あの臭いをそう簡単に消せるものではない気がする。
「騙されたと思って食べてみてください。まったく臭くありませんから。観光できた日本人を何人も連れていっています。皆、これなら大丈夫って食べてますよ」
信じていいのだろうか。臭いがないヤギ料理。その店で出るのは黒ヤギだという。黒ヤギの肉は臭わないのだろうか。そんなことはない気がする。
知人はよほど自信があるようだった。半ば強引に、黒ヤギ料理店に連れて行かれてしまった。
入り口には黒ヤギの看板があった。メニューにあるのは、どれも黒ヤギ料理だという。2万ウォンの黒ヤギ鍋を頼んだ。
鍋が出てきた。ぐつぐつと煮たっている。
「??ん」
獣臭がしない。店内にもその臭いは漂っていない。僕は首を捻っていた。
