たとえシリアスな展開でも、笑いの要素を突っ込んでくるのが韓国ドラマの特徴だ。それほどコミカルシーンが重宝される中で、正真正銘の「笑いの天才」と称するにふさわしい作品を選んでみよう。新刊『韓国ドラマ究極ベスト選 史上最高の韓流傑作は何か』(双葉社)で紹介しているコメディ究極ベスト選から、ここでは象徴的な3作を取り上げる。(以下、一部ネタバレを含みます)

■韓国ドラマは「笑いの天才」!コメディ究極ベスト3選

■『暴君のシェフ

 少女時代ユナが演じるヨン・ジヨンは、パリで3つ星を手にした天才シェフ。彼女の料理は芸術と情熱の結晶といえる。そして、イ・チェミンが扮するのは、傲慢にして孤高の暴君イ・ホンである。

 物語は、時の流れを超える奇跡の瞬間から始まる。フランスの料理大会で優勝したジヨンが韓国行きの飛行機に乗り込んだとき、突如として運命の渦に呑み込まれ、朝鮮王朝時代へとタイムスリップしてしまう。そこでは、イ・ホンが狩りを楽しむ世界が広がっていた。

 周囲を恐れさせるイ・ホンは、同時に並外れた味覚を持つ美食の王でもあった。ジヨンが彼に捧げる料理は奇跡の一皿。王の怒りを鎮め、心をも動かす。しかも、ドラマで登場するメニューを視聴者が五感で堪能することができる。そして、描かれるエピソードの随所に最高級の笑いが秘められている。

●配信情報

Netflixシリーズ『暴君のシェフ』独占配信中

[2025年/全12話]演出:チャン・テユ 脚本:fGRD

出演:ユナ(少女時代)、イ・チェミン、カン・ハンナチェ・グィファオ・ウィシク、ユン・ソア、イ・ジュアンパク・ヨンウン、キム・グァンギュ、ホン・ジン

■『社内お見合い

 大手食品会社に勤める研究員ハリ(キム・セジョン)は、友人チン・ヨンソ(ソル・イナ)の代役として、気まぐれなお見合いを引き受けた。それが運命の始まりだった。

 相手は同じ会社の社長テム(アン・ヒョソプ)。冷徹で完璧、誰もが近づけない若き経営者である。テムは祖父カン・ダグ(イ・ドクファ)会長からのしつこい縁談攻撃にうんざりしていた。だからこそ、この見合いは彼にとって逃避の一手でしかなかった。だが、ハリの天真爛漫さと誠実な瞳がテムの心を動かした。

 2人は会長の目を欺くため、偽りの恋人を演じ始めるが、やがてテムはその「偽り」に真実の愛を見出す。こうしてテムのカリスマ性が少しずつ解け、恋する青年へと変わっていく。アン・ヒョソプの演技はその変化を見事に表現していた。

 また、ハリ役のキム・セジョンは、喜怒哀楽を軽やかに行き来し、まるで春の風のように物語を明るく包み込む。その生き生きとした演技が本作を唯一無二のラブコメディへと押し上げた。

Netflix『社内お見合い』独占配信中

●配信情報

Netflix『社内お見合い』独占信中

[2022年/全12話]演出:パク・ソンホ 脚本:ハン・ソルヒ、ホン・ボヒ

出演:アン・ヒョソプ、キム・セジョン、キム・ミンギュ、ソル・イナ、イ・ドクファ、キム・グァンギュ