そんなナクスだが、11話で、元いた大企業の直属の常務から復帰の誘いが来る。そのとき、常務が用意した手土産にもリアリティがあった。LAカルビである。

 韓国料理のLAカルビとは、比較的安価な米国産牛のあばら骨周りの肉を味付けして焼いたものだ。肉は歯ごたえがあるので、その噛み味と濃い目の味付けでソジュやビールが進む。

 安価なので家庭でもよく食べられているし、『北極星』をはじめとするドラマや映画にたびたび登場するソウル・イニョドンのホテルPJ近くには専門店が集まっている。

 常務は甘言を弄してナクスを呼び込もうとするが、そのわりには手土産がしみったれている。ナクスの好物には違いないが、LAカルビは贈り物としてはC級だ。「ナクスにはLAカルビでもやっておけばいい」という本音が透けて見える。相手を尊重する気持ちがあれば、牛肉のなかでも高級なコットウンシム(霜降りロース)やアンチャンサル(牛ハラミ)を選ぶべきなのだ。

 常務は12話でナクスに再びLAカルビを贈っている。今度は真心が伝わったのか、ナクスは受け取って家族三人で旨そうに食べた。

LAカルビは中央に円盤型の骨があるのが特徴
ソウルのホテルPJの脇道にあるLAカルビ横丁

 ●配信情報

Netflixシリーズ『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』独占配信中

[2025年/全12話]演出:チョ・ヒョンタク 脚本:キム・ホンギ、ユン・へソン

出演:リュ・スンリョン、ミョン・セビンチャ・ガンユンユ・スンモク、イ・ソファン、イ・シンギ、イ・ジニ、チョン・スンウォン、ハ・ソユン、シン・ドンウォン

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