Netflix配信『エージェントなお仕事』は、華やかなスポットライトの影に潜む、混沌とした人間模様を映し出す鏡のような作品だ。物語の舞台となるのは大手芸能事務所「メソッドエンターテインメント」。この会社を揺るがせた危機から物語の幕が切って落とされていく。(以下、一部ネタバレを含みます)
■大手芸能事務所を舞台にした『エージェントなお仕事』見どころは?
ドラマの序盤で、事務所を率いてきた創業者が悲劇的に急逝する。社内に激震が走ったが、混乱の渦中で1人の男が不気味なほどの存在感を放ち始める。総括理事のマ・テオ(イ・ソジン/『イ・サン』『ソジンの家』)である。
もともと、マ・テオは独立を画策し、水面下で着々と準備を進めていた。しかし、社長の不在という緊急事態を目の当たりにして、彼はその野心を方向転換させる。退社という選択肢を捨て去り、空席となった権力の座に自ら就いて組織全体を掌握しようとする。
マ・テオが有能であることは間違いない。しかし、利益と効率を最優先するその姿は、まさにリアリストの極みと言える。この難役を演じるのがイ・ソジンだというところに、本作の妙味がある。目的達成のために手段を問わないマ・テオの強引なバイタリティは、イ・ソジン自身が長きにわたり芸能界で生き抜いてきた経験値と重なり合う。彼の冷ややかな視線の奥には、業界を知り尽くしたベテラン俳優ならではの凄みが漂っている。
一方、右往左往する現場の社員たちの中心にいるのが、チーム長マネジャーであるキム・ジュンドン(ソ・ヒョヌ/『優しい女 プ・セミ』『悪の花』)とチョン・ジェイン(クァク・ソニョン/『ムービング』『賢い医師生活』)だ。この2人は、まさに中間管理職の悲哀を体現している。担当する俳優たちが持ち込む突拍子もないトラブルの火消しに追われ、一息つく暇もない。
さらに、実権を握ったマ・テオからは無理難題とも言える指令が次々と飛んでくる。理不尽な要求と予測不能な俳優たちのエゴの板挟みになりながらも、泥臭く奔走する2人の姿は、涙ぐましくもどこかコミカルだ。その必死な姿こそが視聴者の共感を呼ぶ。