中国人にとって、韓国料理といえば、まず焼き肉ということになるようだった。春節前の1月だったが、ソウルの繁華街にある一軒の焼き肉店の前に人だかりができていた。聞こえてくるのは中国語だった。店頭にいたマネージャー風の女性に訊くと、焼き肉の食べ放題店だった。
同行していた知人によると、マネージャーは食べ放題のことを、「ムハンリピル」といっていたという。「ムハン」は韓国語で「無限」、「リピル」は英語の「refill」由来で「おかわり」の意味だった。
さまざまなコースがあるようだが、その店はひとり2万ウォンほどのコースを注文する人が多いということだった。日本円で2000円ほどで焼き肉の食べ放題……安かった。
「毎日、中国人の団体観光客がたくさんきますね。いま、大きな団体が食べ終わったところです。席、ありますよ」
商売熱心なマネージャーだった。
これは韓国に限ったことではないが、食べ放題店は、外国人観光客に人気だ。細かく注文する必要がない。それぞれが好きなものをとって食べることができるから、不満も生まれにくい。添乗員にしても、事前に打ち合わせる必要がないから、負担も軽くなる。
「どんな感じの焼き肉なのか、1回、食べてみましょうか」
知人は韓国のマスコミ関係の仕事に就いている。中国人旅行者の様子を見てみたいという好奇心もあったのかもしれない。
店内に入ってみた。テーブルのほとんどが埋まっていた。各テーブルに排気ダクトが吊りさげられている。これで焼き肉の煙を吸い込んでいく。並ぶテーブルの奥に開放型の冷蔵庫装置があり、そこに肉が並んでいた。
「準備ができるまで、上の階で待っていてください」と、店員にエレベーターに乗るよう促された。待合室がある焼き肉店だったのだ。
食べ放題の肉はこう並べられていた