物価がじりじりとあがるなかで、ソウルでは韓食ビュッフェがちょっとしたブームになっている。バイキングスタイルの食べ放題店で、スタートはビジネス街だった。物価の上昇は、サラリーマンたちの財布に響き、ランチを直撃していた。
■物価高で広がる食べ放題スタイルの店、焼肉のムハンリピルにも観光客が集まる
物価高は、ビジネス街で店を開く夜の飲食店にも影響を与えた。値あがりする食材が、経営を圧迫しはじめていたのだ。そこで夜専門だった飲食店が、ランチをはじめるようになる。しかし人件費をそうかけられない。そこで生まれたのが食べ放題スタイルだった。少ないスタッフで切り盛りしようとしたわけだ。
この食べ放題がサラリーマンたちのランチを救っていく。料金は8000ウォンから1万ウォン。日本円で千円もしない料金で満腹感を得ることができる。まだ給料が高くない若いサラリーマンたちは、こぞって食べ放題店に向かうようになる。
食べ放題店は、シニア層にも受け入れられていく。とくに現役を引退した年齢の人たち。年金生活の人たちの間でも人気を集めていく。
以前、鐘路3街駅近くにある韓式ビュッフェに昼どきに入ったが、席を埋めていたのはサラリーマンよりも老人の方が多かった。彼らの暮らしも決して楽ではない。物価が上昇しても、それに見合うように年金があがるわけではない。そんな人たちの食生活にも食べ放題店はマッチしていく。思わぬ広がりをみせていくのだ。
そこに拍車をかける事態が昨年から起きた。中国人観光客の急増である。
2025年6月、親中派といわれるイ・ジェミョン(李在明)政権が発足して早々、韓国にやってくる中国人に対してノービザ入国が認められるようになった。中国人は簡単に韓国にやってこれるようになった。いっぽう、日本の首相の発言を契機に日本と中国は関係が冷え込み、中国は日本への渡航自粛を打ち出していく。
日本に行きにくくなった中国人は、韓国に集まるようになっていく。今年の春節、ソウルの明洞では、そこかしこから中国語が聞こえる事態だったという。
中国人旅行者の急増を、韓国政府もある程度、予測していた。韓国政府は、今年の春節の中国人観光客を、昨年の44%増の19万人と予測していた。
韓国ドラマも観光旅行熱を後押しした。かつて、中国で『星から来たあなた』(2013年~2014年)が大ヒットし、最高視聴率は33%を超えた。同作は、400年前に地球にやってきた異星人と、トップスターの間で繰り広げられるSFラブファンタジーだ。チョン・ジヒョンとキム・スヒョンが主演を務めた。その後、中国では韓国のファッションや料理、文化への関心が一気に高まっていったという。