Netflix大ヒット作『素晴らしき新世界』でイム・ジヨンが扮するのは、朝鮮王朝時代から現代へとタイムスリップしてきた女性である。過去の世界においては国王の寵愛を受ける悪女だったが、現代では無名の女優シン・ソリの身体に乗り移っている。精神は朝鮮王朝時代の価値観を持っているのに、現代生活への適応ぶりが巧みだ。
そして、ソリはチャイル財閥の孤独な後継者チャ・セゲ(ホ・ナムジュン)と運命的なラブロマンスを繰り広げる。イム・ジヨンはこの役を奔放に演じている。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『素晴らしき新世界』物語が終盤へ向かうにつれて、イム・ジヨンの演技がさらに深みを増していく
はるかなる300年の時空を超えてきたソリの心の中は、非常に複雑に入り組んだ記憶の迷宮と化している。最大の転機は、ソリの子供時代の記憶が突如として脳裏に蘇ったことだ。予期せぬ記憶のフラッシュバックにより、朝鮮王朝時代から来た女性の魂が実はソリの人生そのものではないか、という仮説が浮上する。
私は過去の人間なのか、それとも現代のソリ自身なのか。自らの正体と存在意義が揺らぎ、自分が誰なのかわからなくなる極限のアイデンティティ・クライシス。このような謎めいた心理状態に陥る展開において、イム・ジヨンが持つ繊細な表現力が見事に光り輝いている。
ソリをさらに苦しめるのは、愛するセゲとの関係性である。ソリはセゲを愛しながら、早くも自分が朝鮮王朝時代へ帰らなければならないという悲壮な覚悟を決めていた。セゲを残して立ち去る罪悪感と彼への愛ゆえにためらってしまうことへの恐怖感。その感情が心を締め付ける。
自らが過去へ帰還する決意を告白したとき、セゲは尋常ではないほど怒りを露わにした。
「絶対に帰さない」
そう激しく言い放った彼の言葉は、愛する人を失うことへの悔恨の裏返しである。その怒りが強烈であるほど、セゲがどれほど深くソリを愛しているかが痛いほどに伝わってくるのだ。
果たして、これほどまでに愛してくれる人を残し、自分はひとり帰ってしまうのか。過酷な運命に恐怖心を抱いていたソリであったが、先の「子供時代の記憶の蘇り」が、彼女の暗闇に一筋の光をもたらす。