『ガス人間』『地獄が呼んでいる』シリーズや『新感染 ファイナル・エクスプレス』などで知られるヨン・サンホ監督。2018年に執筆したグラフィックノベルを自ら映画化した映画『顔 -かお-』が日本で公開中だ。
主演を務めるのは実力派俳優パク・ジョンミン。ヨン・サンホ監督とは『地獄が呼んでいる』に続くタッグとなる。本作でパク・ジョンミンは、盲目の父とその息子の1人2役に挑戦。見事な演技で2026年「百想芸術大賞」映画部門の男性最優秀演技賞を受賞した。(以下、一部ネタバレを含みます)
■映画『顔 -かお-』パク・ジョンミンの1人2役、顔を見せないシン・ヒョンビンの演技に注目
イム・ドンファン(パク・ジョンミン)は、先天性の視覚障がいをもちながらも、美しい印章を作り出す偉大な篆刻師の父、イム・ヨンギュ(クォン・ヘヒョ)を尊敬している。
ある日、ドンファンのもとに警察から、40年前に失踪したと聞かされていた母チョン・ヨンヒ(シン・ヒョンビン)が白骨死体で見つかったとの連絡が入る。しかも、他殺の疑いが強いという。
父親のヨンギュを追ってドキュメンタリー番組を撮影していたキム・スジンPD(ハン・ジヒョン)とともに、ドンファンは当時、縫製工場で働いていたヨンヒを知る人々を訪ね、母の過去をたどっていく。
ところが、みんなの口から語られるヨンヒの人物像は「化け物のように醜かった」というものばかりで……。
『顔 -かお-』のなかで、過去の舞台となるのは、「漢江の奇跡」と呼ばれた高度経済成長期、1970年代の韓国。衣料産業の中心地として栄えたソウル・平和市場だ。
当時の平和市場では、劣悪な環境のもと、多くの女性労働者が長時間労働を強いられていた。本作は、そんな社会の底辺で生きる人々の苦悩と、弱者のために不正を許せず立ち上がった女性が、世間から浴びせられる誹謗中傷を描いている。
本作で特に注目したいのが、自ら提案してドンファンと、若き日の父・ヨンギュの1人2役を演じたパク・ジョンミンだ。さらにヨンギュの中に潜む二面性まで巧みに演じ分けている。
また、パク・ジョンミン演じる青年時代のヨンギュを実際に見てから、それに合わせて晩年のヨンギュを演じたというベテラン俳優、クォン・ヘヒョの重厚な演技も見逃せない。