俳優リュ・スンリョンが去る10月9日、韓国・釜山で開催の第31回「釜山国際映画祭(BIFF)」の映画ファン向けトークイベント「アクターズハウス」に登壇した。

 無名の演劇人だったリュ・スンリョンは、映画『王になった男』から『7番房の奇跡』『バトル・オーシャン/海上決戦』『エクストリーム・ジョブ』まで、観客動員1000万人を超えた映画4本に名を連ねる韓国のトップ俳優の1人に上り詰めた。

 この日は出演したドラマの裏話や独自の演劇論にいたるまで、ユーモアたっぷりの語り口ながら、真摯な情熱が伝わる熱くて濃密なイベントとなった。

■ 「強盗1」から出発したリュ・スンリョン、人生を変えた監督の言葉「もう少し掘れば澄んだ水が湧き出てくる」

 今や名実ともにトップスターとなったリュ・スンリョン。演劇の舞台から映画界へ足を踏み入れた初期の出演作は、2004年の映画『知り合いの女』だった。名前すらないチョイ役の「強盗1」。太い眉毛や野太い声など荒々しい独特の風貌だったため、当時は「オファーされる役どころが非常に限定されていました」と語る。

 将来への強い不安の中にいたころ、自分を救ったのはその後、数々の名作を共にしたイ・ジュニク監督だった。

「地面を深く掘れば指が痛いが、もっと掘ればいつか澄んだ水が湧き出てくる」と監督に諭されたリュ・スンリョンは、この言葉を心に刻んで演技に磨きをかけ、観客動員1000万人突破の映画を4本も世に送り出す名優へと成長した。

写真提供:釜山国際映画祭(BIFF)

■ 良いコメディアンの条件「心からそう信じて演技すること」

 過去に出演した作品について聞かれたリュ・スンリョン。即興で演技を振り返ったり、歌を披露したりするなど、ファンサービスを次々と繰り出し客席を笑わせた。その一方で「コメディーはすればするほど難しい」と吐露。

「良いコメディアンになりたいなら心からそう信じて演技することが一番大切です。Netflix配信『タッカンジョン』でも、私は娘(キム・ユジョン扮)が本当にタッカンジョン(甘辛タレの鶏唐揚げ)になったと信じて演じました。私が信じなければどうして視聴者を説得させられるでしょうか」と問いかけると、劇中に登場する娘の名「ミナー!ミナー!」を連呼して会場を爆笑させた。

■大ヒットドラマ『ムービング』号泣シーンは実体験から。思い出した父の姿

 ディズニープラス配信のヒューマンアクション『ムービング』は、リュ・スンリョンにとって特別な作品となった。2023年の「アジア・コンテンツ・アワード&グローバルOTTアワード」において、リュ・スンリョンは同作で最優秀主演男優賞を受賞。同作は、最優秀新人女優賞(コ・ユンジョン)、最優秀クリエイティブ賞、最優秀視覚効果賞、最優秀脚本賞のなど最多6部門を受賞するなど、高い評価を受けた。

 リュ・スンリョンは、どんな傷もすぐに回復する無限再生能力者チャン・ジュウォンを演じたが、涙のシーンは格別な語り草となっている。

「私の実の姉が10年以上前に天国に行きました。演じる際に参考にしたのはその時の父の姿です。娘を失ってむせび泣く父の姿を思い出したのです」

写真提供:釜山国際映画祭(BIFF)

 最近ではNetflix配信ドラマ『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』で、居場所を失った中年男性の哀愁を代弁し、大きな反響を得た。この作品で、リュ・スンリョンは今年の「百想芸術大賞」TV部門の大賞のほか、「ソウルドラマアワード」国際競争部門男性演技賞も受賞している。

「父親役を繰り返し演じることに負担はないのか?」という質問には、「世の中には“父親”がどれほど多くいるでしょうか。父親も千差万別でそれぞれが本当に違うので、私のイメージが固定化されることはありません。そう考えたら、作品を選ぶ時にとても自由になった気がしました」と語った。