少女時代ユナ主演の人気タイムスリップ時代劇『暴君のシェフ』で、イ・チェミンが演じた国王イ・ホンは圧倒的な存在感を持っていた。抜群の才能がありながら残虐な形でした自分を表現できない弱さ……。そこに、孤高の哀愁があった。そんな複雑なキャラだったイ・ホンは、史実の10代王・燕山君(ヨンサングン)を彷彿させていた。
■『暴君のシェフ』国王のモデル、燕山君は堕落した国王が追放されるというクーデターの前例を作ってしまった
燕山君は、朝鮮王朝の歴史上で「最悪の暴君」として悪名を轟かせている。果たして、どんな人生を歩んだのか。
1476年に9代王・成宗(ソンジョン)の長男として生まれた。本来であれば王位継承者として何不自由ない環境で育つはずだったが、彼の人生には幼い頃から暗い影が落ちていた。生母である尹氏(ユンシ)が、度重なる不祥事をおかして死罪になってしまったからだ。
1482年に尹氏が絶命したとき、世子となった長男はまだ幼かった。実母が悲惨な死を遂げた事実を知らされないまま孤独の中で育っていった。
1494年、18歳で燕山君は即位した。はじめから暴君だったわけではなく、最初の数年間は、父・成宗の政策を引き継ぎ、善政を行っていた。しかし、彼の統治は突如として変わり果ててしまった。
なぜ燕山君は変わってしまったのか。引き金となったのは、実母・尹氏の死の真相を知ったことだ。
官僚たちが結託して母を死に追いやったこと。そして、祖母・仁粋(インス)大妃さえもそれに加担していたという事実は、燕山君の精神を徹底的に乱した。その末に、母の復讐を誓った彼は、尹氏の死に関わった者たちを次々と処刑していった。
生活も極端に乱れた。燕山君は「儒教の聖堂」である成均館(ソンギュングァン)を遊興の宴会場に変えてしまい、酒池肉林の宴を繰り返した。さらには、重税で庶民を苦しめ、歯向かう重臣を虐殺した。
そんな堕落した統治が長く続くはずもなかった。1506年、ついに重臣たちが反乱を起こして、燕山君はあっけなく廃位され、江華島(カンファド)へ流刑となった。そして、わずか2カ月後、30歳で惨めな生涯を閉じた。