■岡山の名湯に残る伝説の化け物「はんざき」とは?

鯢大明神に祀られている「はんざき」の像

 岡山県の湯原温泉にある「鯢大明神(はんざきだいみょうじん)」には、こんな伝説が残っている。

 湯原の町を流れる旭川の龍頭ヶ淵には、長さ三丈六尺(約11m)胴回り一丈八尺(約6m)という巨大な「鯢」が住み着いており、通りがかった牛馬や人を引きずり込んで食っていた。

 文禄元年(1592)、三井彦四郎という若者がこの化け物を退治しようと、短刀を口に咥えて淵に飛び込んだ。やがて川の水が赤く染まり、鯢が浮かび上がり、その腹を割き破って彦四郎が無事な姿で現れた。

■はんざきの祟りか!? 化け物退治の一家が全滅!

 しかしそれからというもの、奇怪な噂が流れるようになった。夜中になると、彦四郎の家の戸が叩かれ、号泣する声が聞こえるのだ。村人はそれを恐れて、だんだんと三井家と疎遠になっていった。さらに三井家の人々も次々と亡くなり、ついには一家は断絶してしまった。

 その後も村には様々な災いが起こり、村人は退治した鯢の霊を慰める必要を感じ、淵のそばに祠を建てて鯢の霊を祀った。これが鯢大明神のはじまりで、三井彦四郎の墓も近くに建立されている。

この「鯢(はんざき)」とは、オオサンショウウオのことである。

 地球上に生きる動物の中で、脊椎動物に含まれるのは、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類の5つに分けられる。そのなかのひとつ「両生類」だが、現存しているのは無尾目(カエル類)、有尾目(サンショウウオなど)、無足目(アシナシイモリ類)の3群のみ。両生類は3億6000年前に陸上で生活を始めたと考えられているが、ほぼ全てが淡水域で暮らしている。