■縞模様でアブやハエはシマウマを刺せない

 シマウマの縞模様は虫を寄せつけないという実験もある。カルフォルニア大学デービス校の野生生物学教授ティム・カロは、観察の結果、吸血性のアブやハエから身を守るためではないかと考えた。

 

 そこでまず自分で縞模様のコートを着た場合と無地のコートを着た場合でアブやハエの寄ってくる数を調べた。さすがである。体を張っている。科学者の鏡といっていい。

 

10年以上のフィールドワークで、シマウマの模様はアブを避けるためだと発見した、シマウマのコスプレでノリノリのティム・カロ教授 。

クレジット: Maurice Weiss 画像元:カルフォリニア大学 プレスリリース

 次に馬にも縞模様のコートや水玉模様のコートを着せ、アブやハエの動きを調べた。ビデオのスロー再生で観察すると、虫は寄っては来るものの、縞模様の場合は皮膚にとりつく率が低いことが分かった※2。縞模様が虫の視覚を混乱させるのもかしれない。

※2 「Scientists Solve the Riddle of Zebras’ Stripes」(カルフォルニア大学デービス校リリース  April 01, 2014)

 

実験ではウマにさまざまな模様のカバーをかけ、アブに刺される回数を数えた。最初は教授自身が縞模様の衣装を着て実験したそうだ

画像:School of Biological Sciences, University of Bristol

■牛もシマシマにすると虫に刺されない!


 カロの実験を受けて、愛知県農業総合試験場ではシマウマならぬ“シマウシの実験”を行なった。牛も吸血性のサシバエに刺されて困っているのだ。サシバエは刺されると痛くて牛のストレスになる上、伝染病も運んでくる。かといって殺虫剤をまけば、牛の健康に良くない。

 

 そこで牛にペンキで縞模様を描き、サシバエが指すかどうかを調べたのだ。すると30分間で無地の牛にたかったサシバエの数は129匹、縞模様の牛にたかった数は55匹と半減した。

 

シマウマならぬシマウシには、アブは普通の牛に比べて半分の数しか近づかないことがわかった 「黒毛和種をシマウマ模様に塗った「シマウシ」は吸血昆虫の飛来が減少します~新たな吸血昆虫対策技術の開発~」

(愛知県農業総合試験場 2019年10月10日)

 同試験場では、シマ模様を長期間残す方法やより効果的な模様の研究を続け、薬品を使わない防虫を行ないたいとしている。

 

 シマウシ……。ちなみに乳牛(ホルスタイン)の白黒模様の理由は? いろいろ調べたが、誰も研究していなかった。なんだろうね、あの模様は。