日本で祝い事や年中行事、もてなしなどのハレの日の食べ物というと、「めでたい」にかけたタイ(鯛)、「福に」かけたフグ、伊勢海老、寿司、正月の雑煮、赤飯などだろうか。

 我が国では正月に雑煮を食べるのは日本と同じだが、日本の人が意外に思うハレの日の食べ物も少なくない。

チャプチェ(春雨と牛肉野菜炒め)は祝い事がある時の食卓に並ぶ

 チャプチェは韓国の庶民的な惣菜というイメージが強いかもしれないが、じつは朝鮮王朝の宮廷でも食べられていた料理だ。かつてはキノコ類を中心とした野菜と肉の炒め物をゴマ油で仕上げたものだった。春雨を使うようになったのは、日本植民地時代の後期だといわれているので意外と歴史が浅い。

 宮廷では旬の素材をまずは宗廟(祭礼のための祠堂)に供えるならわしがあり、それを丁寧に調理したものが王様の御膳にのぼった。韓国時代劇の魅力を日本の幅広い層に知らしめたドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』では、チャプチェを鮮やかに見せる素材として黄色が鮮やかな黄花采(萱草の花)が用いられる場面があった。

 最近のドラマでは、Netflixシリーズ『スタートアップ:夢の扉』(2020年)にチャプチェがハレの日の食べ物であることを感じさせる場面があったので、確認してみてほしい。

全州の韓定食店のコースの前菜として出てきたチャプチェ。このときは黄花采ではなく赤黄緑のパプリカが彩りの食材として使われていた