これまで韓国で制作されてきた時代劇を数多く見てきたが、個人的には『赤い袖先』が最高傑作だと思っている。イ・ジュノ2PM)とイ・セヨンの主役コンビの絶妙な演技、歴史的な事実に基づいた劇的なストーリー、抒情性のある映像美など、ドラマとして素晴らしい出来ばえだった。

 さらに、朝鮮王朝の王宮で奉職した宮女の生活も詳細に描かれていて、その点でも強い感銘を受けた。

 やはり、『赤い袖先』の内容を深く味わうためには、当時の宮女の人生に思いを馳せる必要がありそうだ。彼女たちは王朝にとってどんな存在だったのか、と。

 それを考える手段として、普遍的な彼女たちの存在理由を見てみよう。そこには常に「哀しさ」がつきまとう。

 もともと、宮女は見習いとして5歳から10歳までに王宮に入ってきて、厳しい修業を強いられて成長していく。その間に、不適格者として排除されてしまう宮女も多い。その中で生き残った女性は10代後半で一人前の女官となり、料理、衣装、刺繍などの部門に配置されて王宮の裏方として専門的な職種に就く。

 原則的に言えば「宮女はすべて国王と結婚した」と見なされる。それゆえ、他の男性との恋愛はご法度だ。もし発覚すれば厳しく処罰される。それでも、男女の間には避けられない事情が生じる。

昌徳宮の秘苑にある宙合楼と芙蓉池は『赤い袖先』で何度も撮影場所になっていた