10月15日に釜山アジアド主競技場でBTSのコンサートがあるため、久しぶりの訪韓が釜山という人、あるいは、初めての訪韓が釜山という人も少なくないようだ。

 1泊2日の弾丸で参加する人も多いのだろうが、せっかく行くならと2泊3日以上の滞在を予定している人のために、釜山でぜひ訪れてほしいスポットと、おすすめの地元グルメをお伝えしよう。

■山の斜面に家がびっしり建てられたタルトンネ

 釜山は1876年(明治9年)、日本によって開港されるまでは南東のはずれの漁村に過ぎなかった。開港後は朝鮮半島の玄関口として繁栄したが、1945年の日本の終戦時は半島を出る日本人と半島に帰る朝鮮人が往来。1950年に朝鮮戦争が起きると半島全土から避難民が釜山に殺到し、1925年に約7万人だった人口が休戦後の1955年には104万人にふくれあがった。

 よそから移住してきた人たちは平地に住まいを確保することが難しく、その多くが山の斜面にバラック小屋を建てて暮らし始めた。こうした集落は月(タル)に近い町(トンネ)=「タルトンネ」と呼ばれ、釜山だけでなく人口が集中するソウルにも形成された。

港町のイメージが強い釜山だが、じつは面積の半分近くが山だ

 韓国映画では、『パラサイト 半地下の家族』の主人公一家(ソン・ガンホチェ・ウシクパク・ソダムら)が住んでいた家も、『バーニング 劇場版』でヒロイン(チョン・ジョンソ)が住んでいたヴィラも、『チャンシルさんには福が多いね』の主人公が引っ越した下宿も、ソウルのタルトンネにあった。

 韓国ドラマでは、イ・ソンギュン主演『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』で、ヒロインのジアン(IU)がおばあさんといっしょに住んでいたところがタルトンネだ。最寄り駅からかなり距離があること、家と家に挟まれた路地の狭さなど、タルトンネのもの悲しさが描かれていた。それと同時に、ドンフン(イ・ソンギュン)がジアンの家の近くで友人の名を呼ぶと、少し距離のある家の窓から友人が顔を出すなど、ご近所さんとの精神的距離の近さを感じさせる場面もあり、そのあたたかみもよく伝えていた。

 山に囲まれた釜山は、地形だけ見れば全体がタルトンネと言っても言い過ぎではない。この十数年で釜山を代表する観光地になった「甘川文化村(カムチョン・ムナマウル)」は今でこそ、おしゃれなカフェや撮影スポットに若者が群がっているが、本来タルトンネである。

 しかし、甘川文化村まで行かなくても、本来のタルトンネの風情を感じられる場所は釜山のいたるところにあるので、下の写真を参考に歩いてみてほしい。

柳致還の郵便ポストのある展望台付近から草梁駅方向を望む。甘川文化村以外の傾斜地にもテラスや休憩所、カフェなどが多くできている
凡一洞から放浪画家イ・ジュンソプ通りの坂を登った辺りからタルトンネを見下ろす
凡一洞から北西方向に坂をのぼったところにあるタルトンネ、ホランイマウル(虎川村)