日本に都道府県ごとに「県民性」という特徴や気質があるように、韓国にも各道ごとに「道民性」がある。

 道とは、ソウルを取り囲む京畿道(キョンギド)、半島の中央部から西海岸に至る忠清道(チュンチョンド)、東海岸に面した江原道(カンウォンド)、その南に位置し釜山(プサン)に至る慶尚道(キョンサンド)、その西の全羅道(チョルラド)、そして、その南に浮かぶ済州道(チェジュド)だ。

 韓国第二の都市・釜山とそれを取り囲む慶尚道の人々は、道民性も訛りも特徴的なので、ドラマや映画に登場することが多い。

■「釜山に住んでいれば釜山人だ!」映画『国際市場で逢いましょう』より

 釜山と釜山人を知るために観るべき映画がある。

 ひとつが韓国で1400万人以上を動員した『国際市場で逢いましょう』(2014年)だ。

 本作は舞台は釜山だが、主人公ドクス(ファン・ジョンミン)一家は朝鮮戦争のとき、北側の咸鏡道興南から避難してきた人たちだ。父親(チョン・ジニョン)と妹を興南に残してきてしまったドクスは、望郷の思いを胸に、釜山に定着した家族を養っていくために身を粉にして働く。

 1950年代前半に起きた朝鮮戦争で、釜山には韓国全土から避難民が押し寄せ、休戦後、人口は倍増した。釜山はいわば「よそ者」の街なのだ。その意味で、ドクス一家は釜山人らしい釜山人といえるだろう。

『国際市場で逢いましょう』のドクス(ファン・ジョンミン)もこんなふうにトロ箱を運んでいた(チャガルチ市場で撮影)
釜山のヨンドタリ(影島大橋)のたもとの朝鮮戦争避難民像。戦時、肉親と生き別れた人たちにとって、「ヨンドタリで会おう」という約束の言葉は希望のともしびだった