韓国ドラマや韓国映画を見ていると、美男美女が華やかにデートをするときは高級レストランが舞台になるが、フラれたりモメたりすると、とたんに場所が屋台になる。登場人物がしんみりする場面に欠かせないのが屋台の持つ「哀愁と情緒」なのである。
過去の作品で屋台シーンが印象的だったのは、古いドラマになるけど『私の名前はキム・サムスン』だ。キム・ソナが演じたヒロインのサムスンは屋台で酒を飲みすぎて暴れていた。酒癖の悪さは抱腹絶倒レベルだった。
映画『パラサイト 半地下の家族』でも屋台が重要なシーンを演出した。パラサイト一家の長男ギウ(チェ・ウシク)が友人のミニョク(パク・ソジュン)から家庭教師の職を紹介されるのだが、その飲み会の場所が店の前の屋台であった。
こうした屋台シーンが大好きで韓国でも屋台で飲みたいと思う人が多いことだろう。実際、韓国の屋台をめぐって飲んでいると、無形文化財みたいな人がどんどん現れてきて、人生をもっと楽しくさせてくれる。
■ソウルの広蔵市場の屋台で、隣り合った人と盛り上がる
そんな人が特に多いのが、ソウルの広蔵(クァンジャン)市場の屋台村だ。その賑わいは「この世の春」といつも思うほど高揚感があり、ズラリと並んだ屋台を見まわしながら「今日はここ!」と決めるときは最高にワクワクする。
たとえば、唐突にラッパを吹き始める人がいて余興としてはこの上ない盛り上がりになる。あるいは、隣り合った人と意気投合して「ウチに来てさらに飲もう」と何度も誘われてしまう。
その度に断ることにしているが、韓国の酒飲みは初めて会った人でも家に呼ぶのが好きだ。そんなときは無理をしないで近場で二次会をすることにしていた。とんでもない盛り上がりが待っていることが多かったが……。