■『スラムダンク』の聖地、江ノ電沿いの人気撮影スポット

 長谷寺から再び江ノ電に乗り、鎌倉高校前駅で降りる。駅の脇の踏切は、『スラムダンク』に登場したことで、今や世界的な撮影スポットになっている。外国人観光客が押し寄せるため、校内には入れなくなった鎌倉高校の門の前で、同校出身の光瀬が言う。

「私が鎌倉高校に通っていた頃は、よく授業をサボって海を見に行っていました。きれいな海は人の向上心を奪い、学力の低下を招きます」

 一同大笑い。これを受けてラジオの構成作家が続けた。

「『スラムダンク』という言葉を聞いて反射的にムカッとしました。なぜならあのマンガは当時中学生だった息子の学力を著しく低下させたのです」

 美しい湘南の海と世界的なコンテンツ『スラムダンク』も形無しである。お母さん、その後息子さんは韓国でもベスト15に入る大学に入り、苦学して英語・北京語・日本語をマスターし、大手食品会社の海外営業部でがんばっているのですから、許してやってください。

 鎌倉高校駅の脇の踏切では、台湾や韓国からの旅行者が撮影に夢中だった。韓国ドラママイ・ディア・ミスター~私のおじさん』では、ソウルの龍山駅の南側にある踏切がよく登場したが、韓国には踏切自体が少ないので、踏切の多い日本の風景は新鮮に映るようだ。

鎌倉高校から江ノ電の踏切に向かう道。映画『THE FIRST SLAM DUNK』は韓国でも大ヒット。国内での日本映画歴代興収ランキング1位に
江ノ電の鎌倉高校前駅の脇の踏切

 長谷駅から腰越駅まで歩き、カフェでお茶を飲む。腰越で思い出したのは黒澤明監督の映画『天国と地獄』(1963年)だ。事件解決に至る重要なシーンがこの辺りで撮影されていた。ゲスト二人とも映画通なので、下手な作品はすすめられないが、日本映画が骨太だった時代の本作は大変見応えがあるので、強推(カンチュ=강추)しておいた。この映画には国際色豊かな横浜の大衆酒場が登場し、品書きにはハングルも併記されているので、韓国語学習者にとっても興味深いはずだ。

腰越駅で江ノ電を迎える