■オリジナリティあふれる味と人情たっぷりの冷麺店
南沙イェダム村からタクシーで5分ほどの場所に「モカ冷麺」という食堂がある。山清の南東部に位置する晋州(チンジュ)に近いことから、韓国三大冷麺のひとつである晋州冷麺の専門店だ。南沙イェダム村へ行く前にこちらで昼食をとった。モカ(목화)とは韓国語で綿を意味するのだが、この食堂の向かい側に、高麗時代末期に韓国で最初の綿栽培地があることから名づけられたそうだ。
冷麺の種類が豊富で、スープが入った水冷麺、ヤンニョム(薬味ダレ)で和えて食べるビビン冷麺、ヤンニョムで和えた干しスケトウダラをトッピングしたフェ(刺身)冷麺、そしてスープにヤンニョムを溶かしたソッコ冷麺もある。
スープやヤンニョムには砂糖を使わず、蜂蜜と山清の特産品である柿を使い、麺は蕎麦粉と小麦粉、サツマイモとジャガイモでんぷん、タピオカ粉と独自の配合で作っているという。
早速ソッコ冷麺を注文した。晋州冷麺らしく、薄切りの牛肉に卵を浸け焼きしたユクジョン(肉煎)の細切りがトッピングされている。
ヤンニョムが溶かしてあるスープは、味に深みがあり、水冷麺とビビン冷麺のいいとこ取りをしているようで得した気分になる。麺も適度なコシとツルンとした舌触りが心地よく、するするとお腹に納まってしまう。
食後にカカオタクシーを呼んで南沙イェダム村へ移動するつもりだったが、このエリアではカカオタクシーのサービスがないことが判明。店主にコールタクシーの番号を尋ねたところ、「私の車で送って差し上げますよ」と仰るのでお世話になることにした。丁重にお礼を伝えると「うちのお客様ですから」と当然のことのように応えた姿に感動した。
旅先ではこんな親切が本当に心に染みる。韓国の方の温かさに触れられる韓国地方旅は、やはり止められそうもない。
●南沙イェダム村へのアクセス
ソウル南部ターミナルからウォンジバス停留所まで約3時間10分。そこからタクシーで約10分。