実際、人気ドラマのロケ地というのは、韓国の地方を訪ねる契機になる。こうして地方を旅するチャンスを得ると、いろいろなことに気づいていく。それは、グルメ、絶景ポイント、歴史的な名所……などなのだが、特に強調したいのが、地方に住む人たちの豊かな情感である。まさに、韓国では人間そのものが最良の観光資源になっていると言える。
市場で楽しく花札をするアジュンマ(おばさん)、悠然とした歩きで大通りを行くハラボジ(おじいさん)、自己主張の強さをファッションで表現するアガシ(娘)、冴えないジャンバー姿さえも流行にしてしまうアジョシ(おじさん)。東アジアのラテン系といわれるほどに陽気で騒がしい人たちが、まだ見ぬ明日よりも今この瞬間の今日を精一杯に生きている。
そうした姿を韓国の地方で体感することは新しい発見につながる。儒教という生活規範が隅々まで浸透している韓国ではあるが、そこに住む人々の考え方と行動は個性的である。それゆえに、論じることより直接触れることが、韓国を知る最良の手段となる。
可能なら、ソウル一辺倒の韓国観光から脱皮するといいかもしれない。東京だけでは日本がわからないように、ソウルが韓国のすべてを象徴しているわけではない。むしろ、ソウルを一歩出たほうがコテコテの韓国に出会えるかもしれない。
そして、韓国を旅するときは何よりも自分の感性を一番大事にしていこう。
「他人のお仕着せに喜ぶような自分じゃない」
その気持ちさえ忘れなければ、韓国はかならず期待に応えてくれるだろう。
ただし、旅に出れば、どんな不測の出来事が起こるともかぎらない。それもまた、大きな楽しみの一つである。