■韓国では寒くてもアイスコーヒーを飲む人が多い

 最近の韓国ではおしゃれなカフェが増え、カフェ文化が花開いているが、そんな店で観察すると、アイスを飲んでいる人の割合が日本よりかなり高い。日本ではホットのほかに、カプチーノやカフェラテを好む人が少なくない。韓国でもその傾向はあるが、それをはるかに凌ぐ割合で、アイスコーヒーを飲んでいる。韓国では「アア」という造語も生まれた。「アイスアメリカーノ」というのが面倒で「アア」になってしまったのだ。

 そしてこんな言葉が広まる。

「オロチュゴドアア」

 最後のアアはアイスアメリカーノ。オロチュゴドは凍えるほど寒いことをさす。訳すとこうなる。

「凍え死んでもアイスアメリカーノ」

 それを耳にしたとき、寒い冬でも意地になってアイスアメリカーノを飲む人のことを揶揄しているのかと思ったが、そうではないらしい。すごく素直に、「アイスアメリカーノが好き」という意味合いが強いという。たしかに冬の韓国のカフェ。アイスアメリカーノを飲んでいる人が多い。凍てつく冬、駅前で知人と待ち合わせをする。道を歩いている人を見ると、アイスアメリカーノを飲みながら歩いている人をよく見かかる。

 昔、厳冬のモスクワを訪ねたとき、マイナス20度を下まわる寒気のなかで、アイスクリーム屋に長い列ができていた。そのときと同じような感覚を抱いたものだった。

 韓国の人たちは、コーヒーではなく、アイスアメリカーノが好きなのかもしれない。僕も倣って、寒い冬にアイスアメリカーノを飲むことがある。コーヒーというより、どこか口のなかをさっぱりさせるような飲み物にも感じられる。濃くて辛い料理を食べた後、アイスアメリカーノはしっくりくる。しかしそれは暖房が効いた店での話で、屋外となると……。

 韓国の冬は、ときにじっとしていることができないほど冷え込む。そのなかを、白い息を吐きながら、手袋をはめた手でアイスアメリカーノをもつ韓国人をみかける。僕にはできない。韓国人の知人はこういった。

「アイスアメリカーノは安いから」

 そういうことではない気がするのだが。

「Angel-in-us」はロッテグループのカフェチェーン。昼間はシニアのたまり場