好みのキムチの食べ方はそれぞれだと思う。好みのキムチという意味ではない。キムチの食べ方の好みである。

 韓国から日本に帰るとき、家への土産にキムチを選ぶことが多い。ソウルでキムチを買うといったら広蔵(クァンジャン)市場が知られている。市街地にあり、なにかと便利な市場だ。ガイドブックにもよく登場する。

 しかしソウルッ子に相談すると、だいたいこういう言葉が返ってくる。

「自分で食べるならいいけど、広蔵市場のキムチをお土産にするのはどうかな。安いけど、中国産の野菜をかなり使っているっていう話。市場のキムチには、野菜の産地が書いてないから」

 すすめられるのが、ロッテや現代などのデパートだ。そこの食品コーナーで売られているキムチならまず安心だという。

 そういったデパートのキムチ売り場の店員さんは、外国人への対応も慣れていて、カタコトの日本語が通じることも多い。

 日本に帰国する……というと、過剰ではと思えるほど、キムチを入れた容器をラップでぐるぐると巻いてくれる。機内持ち込みは許可されないこともあるから、必ず預ける荷物に入れるようにという注意も忘れない。

■韓国で買ってきたキムチ、好みの食べ方は?

 こうしてキムチを買って家に戻る。我が家の男は僕だけだ。妻や娘は常にダイエットだから、「ご飯がすすんじゃうんだよね」とひとこというが、やはり韓国のキムチに期待する。先日買った干しダイコンのキムチは、数日でなくなってしまった。

 キムチの食べ方……そうなのだ。ご飯のおかずとしてのキムチという人が圧倒的だろう。韓国の食堂に入り、テーブルに並ぶ小皿に盛られたキムチもその発想である。僕も長く、キムチとは白いご飯に合うものだと思っていた。

白いご飯にキムチは固定概念?

 十数年前だろうか。ソウル在住の日本人とサムギョプサルを食べにいくことになった。当時、日本でもサムギョプサルの人気が高まっていた。サムギョプサルは豚の三枚肉を焼く料理だ。

 豚肉──。これははじめて韓国に行ったときからの焼肉の混乱だった。韓国といえば焼肉である。そして日本人は、韓国風焼肉といったら牛肉という発想がある。日本に数多くある焼肉店の肉は牛肉がメインなのだ。その感覚で韓国に行く。そして焼肉になるのだが、牛肉の存在感が一気に低くなる。

 テーブルで肉を焼くというスタイルは同じなのだが、韓国人が注文するのは、豚肉や鶏肉が多いのだ。そこで戸惑うことになる。