宮廷ロマンス時代劇の傑作として評価されている『赤い袖先』は、ジュノ(2PM)が堂々と演じたイ・サンとイ・セヨンが情熱的に扮したソン・ドギムを中心に物語が進んだが、同時に周辺の人物も詳しく描かれていた。
たとえば、イ・ドクファが重厚に扮した英祖(ヨンジョ)、チャン・ヒジンが妖艶に表現した大妃(テビ)キム氏、カン・マルグムが冷静に演じた恵嬪(ヘビン)ホン氏などがドラマを大いに盛り上げていた。
その中で、「なぜ彼女が出てこなかったのか」と思える重要人物がいた。それは、イ・サンの正室であった王妃である。歴史的には、孝懿(ヒョウィ)王后と称されている。
■イ・サンの正室、孝懿王后は史実ではどんな人物だったのか?
孝懿王后は、イ・サンを取り上げた他の時代劇では重要キャストとなっている。たとえば、イ・ソジン主演の『イ・サン』では王妃をパク・ウネが演じていて、ヒロインに準じる形でドラマの多くの場面に出ていた。しかし、『赤い袖先』で王妃はキャスティングされず、画面にもまったく出てこなかった。
てっきり、『赤い袖先』では王妃がいない設定なのかと思ったら、セリフの中では存在が二度確認できた。一度は、カン・フンが演じたホン・ドンノが妹の元嬪(ウォンビン)が死んだことを逆恨みして、王妃に罪をなすりつけようとする場面だった。もう一つは、ソン・ドギムが出産した直後に、イ・サンが真っ先に王妃のもとを訪ねていくシーンであった。
このときだけは、ドラマの中で「王妃」の存在を確認できたが、女優が演じていないので、印象度が極端に薄い。本来なら出番が多い役になるはずなのだが、『赤い袖先』ではそうでなかったのだ。カン・ミガン著作の原作小説にはしっかり王妃も登場していたのだが……。
ドラマではイ・サンとソン・ドギムの究極の愛を集中的に描くために、あえて王妃の存在に触れなかったのか。ドラマを見ていて、その「不在」がずっと心に残っていた。
果たして、史実で王妃はどんな女性であったのか。
王妃はソン・ドギムと同じ1753年の生まれだ。イ・サンと結婚したのは9歳だった1762年。ちょうどソン・ドギムが宮女として王宮に入った年であった。
素顔の王妃は、謙虚で温厚な性格だった。朝鮮王朝にいる42人の王妃の中でも彼女は一番人徳があったと評されている。さらに、祖母と母に当たる大妃キム氏と恵嬪ホン氏に心から礼を尽くしたことでもよく知られた。
まさに「聖女」そのものだ。それほどの人格者なので、ソン・ドギムも王妃のことをとても慕っていた。