韓国を代表する港といったら仁川釜山である。港の趣という話になると、釜山に軍配はあがる。海からつづく斜面に沿って建つビルや家々。典型的な港の風景が広がる。

 日本から釜山に向かう船の路線はいくつかある。そのうち、福岡、下関、大阪からの船に乗った。船が釜山港に入り、甲板から眺める釜山の街は、いつも旅情を誘う。

 しかし釜山は日本に向けた港という色合いが強い。ロシアや中国の貨物船を目にしたことはあるが、旅客ターミナルの案内は日本航路が中心だ。

ソウルから電車で約1時間、仁川はどんな街なのか

 韓国という国を眺めたとき、港といったら仁川港になる。しかしこの港の旅情は薄い。大きな港で、コンテナ船などが停泊しているが、周囲はトラックが走る幅の広い道路がつづくだけで街になっていない。港に行くのは乗船切符を手にした人たちだけといった感じだ。

 しかし僕は仁川という街が好きだ。港に行くのは船に乗るときだけだが、港の手前にある仁川の街には、韓国の歴史がぎっしり詰まっている。

 日本でいえば、仁川は横浜という気がする。仁川はソウルから電車で1時間ほど。その距離感も東京と横浜に近い。そう、仁川に詰まっているのは、韓国が海外の国々と渡り合ってきた歴史。そのあたりも横浜に似ているのだ。

 この街には横浜同様、中華街がある。韓国には韓国中華という食のカテゴリーがある。ソウルの街を歩いていても、韓国中華の店はしばしば見つかる。韓国中華の代表格はチャジャンミョンとちゃんぽんである。その発祥はどちらも仁川である。中国の文化はこの街に入り、ここで咀嚼され、韓国に広まっていった。仁川にはチャジャンミョン博物館もある。僕は仁川ではよくちゃんぽんも食べる。

 ちゃんぽんのルーツには2説がある。日本の長崎で中国人が考案したちゃんぽんが韓国に渡り、辛みが加わり、具は海鮮になって韓国ちゃんぽんになったという説。もうひとつはもともと仁川で生まれたが、それを日本人がちゃんぽんと名づけたという説。どちらも中国と日本が絡んでいる。

 仁川を紹介していこうと思うが、まず、仁川への行き方からお話ししようと思う。

 仁川というと空港を思い出す人が多いと思うが、その場所はかなり離れている。仁川国際空港は仁川沖にある島につくられた空港。仁川の街は陸地の海に近いエリアに広がっている。仁川国際空港からA’REXと呼ばれる仁川国際空港鉄道に乗っても仁川は通らない。

 だからというわけではないが、僕は時間があるとき、仁川国際空港とソウルの間の行き来の途中で仁川に寄る。乗り換え駅は仁川ではなく、東仁川になるのだが。