Netflixでヒット中の『ドクタースランプ』は、高校時代のライバルだった美容外科医のジョンウ(パク・ヒョンシク)と麻酔科医のハヌル(パク・シネ)が、挫折による人生どん底のタイミングで再会したことから始まる、癒しのラブストーリーだ。
主人公一家の食事シーンも印象的な本作だが、10話でもハヌルの家の食卓がアップになる場面があった。(以下、ネタバレを含みます)
■Netflix『ドクタースランプ』の食事シーンで交わされた会話の意味とは?
10話中盤の食事シーンで、ハヌルの弟バダ(ユン・サンヒョン)が、「キャベツばっかりだな」と文句を言う。すると、母ウォルソン(チャン・ヘジン)が、「ファン・ジョンミンを見習いなさい」と息子をたしなめる。
勉強ばかりしてきたので、ファン・ジョンミンが誰だかわからず不思議そうにしているハヌルに、バダがあきれたように言う。「ファン・ジョンミンが賞を取ったときのスピーチ、知らないの?」
時数制限のある日本語字幕ではじゅうぶんな説明ができないので、日本の視聴者の多くは何のことかわからなかったのではないだろうか?
ファン・ジョンミンとはもちろん、俳優のファン・ジョンミンである。映画『国際市場で逢いましょう』『ベテラン』『ソウルの春』の主演3作で1,000万人以上を動員した稀有な俳優だ。今やソン・ガンホと彼は韓国映画の二大巨頭と言っていいだろう。
■20年前の映画『ユア・マイ・サンシャイン』主演ファン・ジョンミンの名スピーチ
弟バダが言った「ファン・ジョンミンの受賞スピーチ」とは、2005年の映画『ユア・マイ・サンシャイン』で彼が青龍賞主演男優賞を取ったときのスピーチのことだ。
「私は俳優の端くれに過ぎません。60名ものスタッフと他の俳優が準備してくれたすばらしい料理を美味しく食べただけなのに、私だけこんなスポットライトを浴びて申しわけないです」
この謙虚な言葉が「錦上添花」となり、のちの俳優や歌手のスピーチに多くの影響を与えた。授賞式で多くのスターたちが自身の功績を誇ったりせず、スタッフや他の俳優、両親に感謝の意を表するのは、ファン・ジョンミンの影響が少なからずあるだろう。
この言葉は多くの人々の記憶に残り、のちに国語の教科書にも採用された。
以降、受賞者のスピーチが画一的になり、おもしろみがなくなってしまった面もあるが、謙虚な気持ちを誰にでもかりやすい料理にたとえたのは秀逸で、さすがはファン・ジョンミンと言うしかない。