■釜山名物のミルミョン、麺にそば粉の代わりに小麦粉を使ったのはなぜ?
1950年代前半、朝鮮半島の食文化地図を大きく塗り替えるできごと、朝鮮戦争があった。半島が南北に分断される際、北側の体制を嫌った人々が南側に大移動し、とくに半島南東端に位置する釜山には多くの避難民が押し寄せた。
このとき、釜山をはじめとする南側地域にもたらされた北側の食文化のひとつが冷麺だ。しかし、戦災で世界最貧国になった我が国では、あらゆる物資が不足していたため、食糧は米国の支援物資に頼るしかなかった。そこで、冷麺の麺を小麦粉で代用したのがミルミョンの始まりだ。
ミルミョンの元祖の店といわれているのが、牛岩洞にある「ネホ冷麺」。日本の植民地支配が始まった頃、北部、咸鏡道の興南埠頭(フンナムプドゥ)で冷麺店を始め、朝鮮戦争が勃発したとき、船に乗って釜山に避難してきた一家が開いた店だ。
興南埠頭という言葉でピンと来た人がいるかもしれないが、大ヒット映画『国際市場で逢いましょう』でファン・ジョンミンが扮した主人公ドクス一家とまったく同じ境遇である。
釜山らしいカジュアルな冷麺、ミルミョン。『ドクタースランプ』のハヌル一家を思い出しながら、ぜひ一度味わってみてほしい。