歴史に残る韓国の名作映画をYouTubeで公開している韓国映像資料院が設立50周年を記念し、評論家など映画関係者240人が選んだ「韓国長篇映画100選」を発表した。対象は1934年~2022年まで劇場やオンライン、映画祭で公開された作品で、2023 年6月1日から8月31日まで3カ月間アンケート投票を行い、100本が選ばれた。
今回はその1位から10位までを紹介しよう。なかには1960~1980年代の映画もあるが、そこにスターの原石を見たり、大ヒット作に影響を与えた作品を確認できたりするだろう。(記事全2回のうち前編)
■1位『下女』(1960年)/『パラサイト 半地下の家族』のモチーフとなった作品、国民俳優アン・ソンギの子役時代も
2020年に米国アカデミー賞を独占したポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』の構想に多大な影響を与えたモノクロ作品だ。富豪の主人(キム・ジンギュ)が陰のある家政婦とただならぬ関係になり、家を乗っ取られる話だが、ラストには想像もできないどんでん返しが待っていた。
富豪の家の幼い息子役には小学生になったばかりのアン・ソンギが扮している。筆者はそれを知らずにDVDで鑑賞した。どこかアン・ソンギに似ているなと思ったのだが、あとで調べて本人だと知って驚いた記憶がある。この映画に出る前にすでに20作以上に子役として出演しているので、大変なキャリアであることがわかる。
本作はのちに何度もリメイクされているが、もっとも新しいのが『ハウスメイド』(2010年)だ。下女役にチョン・ドヨン、先輩家政婦役にユン・ヨジョン、富豪の主人役にイ・ジョンジェ、主人の義母役にのちに『シスターズ』で母親を演じるパク・チヨン、主人の娘役にのちにポン・ジュノ監督の『オクジャ』で主演するアン・ソヒョンが扮している。
■2位『殺人の追憶』(2003年)/名優ソン・ガンホの人気を決定づけた名作
公開から20年が経っても色あせない、土の匂いのするノワール作品。1980年代後半から1990年代に韓国映画を見始めた人は、本作をオールタイムベストワンに挙げる人が少なくない。
ソン・ガンホの田舎刑事ぶりが魅力的なのはもちろん、容疑者役のパク・ヘイル(当時20代半ば)の静謐な空気のようなたたずまいがすでに完成されているのもすごい。
ラストシーン、久しぶりに死体遺棄現場を訪れた刑事(ソン・ガンホ)に話しかけたあどけない少女は、今も活躍している女優チョン・インソンだ。のちに『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』で主人公(パク・ヘイル)が観光案内所に立ち寄ったとき、とぼけたスタッフを演じたのを覚えている人もいるだろう。ユン・シユン(『製パン王 キム・タック』)、パク・ソンフン(『涙の女王』)出演作『サイコパスダイアリー』のチャーミングな婦人警官役も記憶に新しい。
本作は、日本で今年公開されるラ・ミラン主演映画『市民ドクヒ(原題)』やNetflix配信作『マスクガール』、『椿の花咲く頃』で名バイプレイヤーぶりを見せたヨム・ヘランの映画デビュー作でもあるので探してみてほしい。
また、古民家に住む被害者を演じたソ・ヨンファは、のちに『逃げた女』『あなたの顔の前に』『小説家の映画』などホン・サンス監督作品の常連になる女優だ。