俳優ハン・ソッキュ(1964年生まれ)が、主演ドラマ『こんなに親密な裏切り者(原題)』で「2024 MBC演技大賞」を受賞した。SBSの『根の深い木─世宗大王の近い─』(2011年)と『浪漫ドクター キム・サブ』(2016年)に続く、3度目の演技大賞受賞である。

『こんなに親密な裏切り者』は、犯罪分析家の父(ハン・ソッキュ)と容疑者である高校生の娘(チェ・ウォンビン)の物語。日本では3月に放送される予定だ。

 授賞式では名だたる俳優たちがハン・ソッキュの席に駆け付け、お祝いの言葉を贈っていたが、日本のSNSを見ると、彼らが受賞者を厚く敬う態度や腰の低さに違和感を覚えた視聴者もいたようだ。日本でハン・ソッキュはひと昔前の俳優、ベテラン俳優の一人くらいにしか見られていないのかもしれない。大変残念なことである。

 今回は1990年代後半から2000年代にかけて、韓国の映画界をけん引した名優ハン・ソッキュの演技世界のすばらしさを知っていただくために、彼が出演した往年の名作のいくつかを紹介しよう。

■祝!MBC演技大賞受賞ハン・ソッキュ、名作映画ベスト選

■無名時代のソン・ガンホと対峙するシーンが見もの!『グリーンフィッシュ』(1997年)

 のちにソル・ギョング主演『ペパーミント・キャンディー』や、チョン・ドヨン主演『オアシス』を撮るイ・チャンドンの監督デビュー作。ハン・ソッキュ扮する家族思いの若者が堅気の世界から逸脱し、破滅へと至る物語だ。

 純情青年が度胸だけで裏社会を渡っていこうとする、ハン・ソッキュの迫真の演技に胸を打たれる。映画出演は2度目のソン・ガンホ扮するチンピラヤクザと対峙するシーンも見ものだ。

韓流以前、『シュリ』より前に日本で評価されたラブストーリーの名作『八月のクリスマス』(1998年)

 面と向かって愛情を表現するシーンはほとんど見られないのに、ハン・ソッキュ扮する写真館主人とシム・ウナ扮するヒロインがそれぞれ一人で相手を思うシーンが心にしみる。

 当時の韓国映画では稀な淡い映像表現は韓国より日本の人に支持された印象だが、年月を重ねるうちに韓国でも高く評価され、ロッテシネマの「あなたがもう一度観たい映画」アンケートではダントツ1位となり、2013年にはソウル各地のメガボックスでリバイバル上映された。韓国映画の再上映としては当時最大規模だった。

 また、本作は日本でもリメイクされ、舞台は富山県高岡市、写真館主人は山崎まさよしが演じたことで話題となった。

『八月のクリスマス』の舞台は設定上はソウルだったが、実際に撮影に使われたのは全北特別自治道群山(クンサン)。写真館のセットには場面写真が飾られている
『八月のクリスマス』の撮影地、群山にある写真館のセット前では今も記念写真を撮る人が絶えない