韓国でも人気のあるグルメ番組の映画版、松重豊主演・監督・脚本の『劇映画 孤独のグルメ』が日本で公開中だ。

 本作は韓国でも撮影が行われ、いくつかの韓国料理が登場する。なかでも重要な役割を果たしているのが、「ファンテヘジャンクッ(干しダラのスープ)」だ。タラの干し方や提供の仕方によって「プゴクッ」とか「ファンテジョンゴル」など、名前が微妙に変わるのだが、日本からの旅行者にも大変ウケがよいので、どんな食べ物なのかお教えしよう。

■干したスケトウダラを煮込んだスープ、ファンテヘジャンクッ

 ソウル旧市街(漢江の北側)の中心部にある中部市場などで、透明の袋に入った大きな干物が並んでいるのを見たことがある人もいるだろう。日本でもおなじみのスケトウダラの干物だ。

 スケトウダラは韓国語で「ミョンテ」と言うが、それを干したものを「プゴ」、江原道(現・江原特別自治道)山間部の屋外で干し、昼解凍・夜冷凍を繰り返したものを「ファンテ」と呼ぶ。ファンテのほうが地域を選び、手間ひまもかかっている分、上等な感じがするので、干され方がどうだろうが、ファンテを名乗る店も少なくない。

『劇映画 孤独のグルメ』に登場したのは、その干しスケトウダラを煮込んだスープである。

 二日酔いを解消する料理として食べられることが多いので、「ファンテ(干しスケトウダラ)ヘジャン(解酲、解腸=胃腸を整える)クッ(汁)」と書かれることもあれば、単に「ファンテクッ(干しスケトウダラ汁)」と書かれることもある。

 一方、ソウル市庁舎の裏手にある名店『武橋洞プゴクッチプ』(1968年創業)のように、質の良い干しスケトウダラを使っていながら、「プゴクッ」という名前で出している店もある。これらは一人用のスープ料理として提供される。

 何人かで大鍋をつつくタイプは、「ファンテジョンゴル(干しスケトウダラ鍋)」などと呼ばれる。

江原道の山間部で昼夜干され美味しくなるファンテ
江原道の食堂で出された鍋料理、ファンテジョンゴル
ファンテジョンゴルに入ったスケトウダラの身