『劇映画 孤独のグルメ』(監督・脚本・主演/松重豊)が、韓国で3月19日から公開されるにあたって、主役の井之頭五郎に扮する松重豊が、韓国で熱心にプロモーション活動をしている。また、Netflixでは松重豊と韓国人歌手のソン・シギョンが出演するグルメ旅バラエティ番組『隣の国のグルメイト』の配信がスタートして、初回から興味深く見た。

■松重豊&ソン・シギョン出演、Netflixグルメ旅番組『隣の国のグルメイト』

 ソン・シギョンは“バラードの皇帝”と称される人気歌手で、バラエティ番組などでも活躍、グルメ通としても知られている。『孤独のグルメ』の大ファンであり、井之頭五郎の韓国出張編にも特別出演していた。

 番組の初回を見て、まずセンスがよいと思ったのは、松重豊がソン・シギョンを案内したのが池袋の中華料理店だったことだ。店選びのことだけではない。テーブルに向かい合って座る松重豊とソン・シギョンの間に、中国出身の女将さんが挟まっている絵がとても豊かに見えたのだ。

 筆者は十年前、全羅北道(現・全北特別自治道)が主催した韓中日の郷土料理イベントを取材したことがある。韓国の全羅北道、中国の江蘇省揚州市、日本の鹿児島県がそれぞれの郷土料理を披露するもので、似たような食材を使っていても三国でまったく違ったものができあがるのを間近に見て、とても楽しかった記憶がある。人間関係もそうだが、一対一だと息苦しかったり対立しがちだったりするが、三者が並び立つと、「こんな発想もあるんだ」とおおらかな目で見られるようになるのは不思議である。

 筆者の周りには韓国リピーターが多いのだが、気になるのは韓国にしか行かない人が少なくないことだ。日本から韓国を見るとき、もうひとつの国が介在すると、等身大の韓国理解がより深まると思う。たとえば、韓国と台湾は植民地時代に日本から共通の食べ物がもたらされた。おでんがそのひとつだが、韓国と台湾ではまったく別の発展を遂げているのをこの目で見ることはとても豊かな経験だ。

台湾のおでん