ゾンビ禍のソウルを舞台にした話題ドラマ『ニュートピア』。第4話で主人公ヨンジュ(ジス/BLACKPINK)の一行に加わった酒浸りの大学浪人生(タン・ジュンサン/『愛の不時着』『ラケット少年団』)はほんのチョイ役かと思ったら、大変印象に残るキャラクターで、しかも日本の旅行者にユニークな示唆を与える存在だった。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『ニュートピア』でわかる、韓国で一人飲みを楽しむ3つの方法とは?
大学浪人生は酒を飲み過ぎて路上で吐いているところを、ヨンジュに声をかけられた。勉強漬けの毎日から現実逃避したかった彼は、一人飲み(ホンスル)の経緯を一次会から三次会まで馬鹿丁寧に説明するのだが、それが意図せず韓国で一人飲みしたい人への有効なアドバイスになっていた。
一人飲みに抵抗の少ない日本の旅行者のために解説してみよう。
●ひとり一次会は中華料理店
浪人生は中華料理店で昼間から高粱酒(コリャンジュ)を1本空けた。高粱酒は日常的に飲む酒ではない。中華式の宴会で頼むくらいだろう。韓国では1980年代に中華料理店でチャンポンの真っ赤なスープ(チャンポンクンムル)をすすりながら、ペガルと呼ばれた高粱酒を飲むのが流行った。アルコール度数は35度から40度。当時はソジュでさえ25度もあったのに、酒の強さを競いたがる男たちが無茶をしていたのだ。
往年の名画『鯨とり コレサニャン』(1984年)では、国民俳優アン・ソンギ扮する風来坊がキム・スチョル扮する大学生とイ・ミスク(『涙の女王』)扮する田舎娘といっしょに旅する途中、下戸なのに、「マッコリは薄くて物足りない。ペガルじゃないと」と見栄を張るシーンがあった。

日本の旅行者にはあまり知られていないが、中華料理店は一人飲みがしやすい店のひとつだ。そもそもチャジャンミョンやチャンポンをサッと食べて帰る一人客が多い業態なので、酒の1本や2本飲んでも奇異の目で見られたりしない。
浪人生はチャジャンミョンとタンスユク(酢豚)、そしてチャンポンクンムルをつまみに飲んだ。どうやらチャーハンまで食べたらしい。飲み過ぎかつ食べ過ぎである。

●ひとり二次会は漢江
高粱酒1本でできあがっているはずなのに、浪人生は漢江沿いの公園に行き、よせばいいのにソジュを2本ラッパ飲みしている。つまみはコンビニで買ったらしきトッポッキとハッバ(魚のすり身の串揚げ)だ。
ドラマの影響で漢江ラーメンを経験した日本人は多いはず。そこに酒を加えるだけのことだ。ソウルには海はないが、とうとうと流れる大河を前に飲む酒は格別である。
