韓国公開を前に、日本での興行収入が10億円を突破した『劇映画 孤独のグルメ』の監督・主演・脚本を務めた松重豊と、韓国の人気歌手で美食家としても知られるソン・シギョンが出演する食べ歩き対談番組『隣の国のグルメイト』が、Netflixで配信中だ。

 第3話「涙が出る、伝説の焼肉」編の舞台は、『孤独のグルメ』に登場した、煙がもうもうと立ち込める昔ながらの日本の焼肉店だった。

■『隣の国のグルメイト』「伝説の焼肉」編の見どころ、日本人と韓国人の焼肉観の違いとは?

 日本の焼肉店で、日本人と韓国人が向かい合うという絵はなかなかおもしろい。松重豊とソン・シギョンはそれぞれの「焼肉観」をもっているので、それがすれ違ったり、互いの経験を話すことで納得したりする。

 筆者は日本に語学留学していた1990年代後半、焼肉店でアルバイトをしていた。注文が聞ける程度の日本語で通用するのは飲食店くらいだったからだ。そのなかでも焼肉店を選んだのは、自国の食べ物だという安心感のせいだったが、実際に食べた日本の焼肉は韓国のそれとはずいぶん違っていた。

 まず、日本で一般的なタン塩は韓国ではごく一部の店にしかない。日本の人は淡白な肉から食べたいのか、タン塩から始める人が多いようだ。タン塩はタレにくぐらせていないので網を汚さないで済むというのも日本人らしい配慮(遠慮?)かも。

『隣の国のグルメイト』でも松重豊とソン・シギョンが網交換について、話題にしていたが、日本では肉をたくさん頼まないと網交換を申し出にくい雰囲気がある。韓国の繁盛店では少しでも網が汚れたら、店員がすぐに交換してくれる。

日本の焼肉のトップバッター、タン塩

 客席にタレが用意されている店も韓国ではあまり見ない。韓国では肉に人数分出てくる塩、ゴマ油、味噌をつけ、サンチュやエゴマの葉で包んで食べるのがふつうだ。

 日本の焼肉店の卓上のタレや肉のつけダレは、当時の筆者にはずいぶん甘く感じられた。店主の話では家族連れが大事なお客さんなので、子供でも美味しく食べられる甘めの味付けにしているとのことだった。最初は甘さが気になったが、ごはんといっしょに食べたとき、その美味しさに感動した。これは日本の飲食店が米の質と炊き方にこだわっているせいもあったろう。

 韓国では焼肉店で肉とごはんを同時に食べる人は珍しい。肉を食べ、酒を飲んだ後、締めとしてごはんと汁物、冷麺などを食べる人が多いのだ。

醤油系のタレが添えられる日本の焼肉

 また、日本では肉を包む葉野菜数枚、小鉢に入ったキムチナムルが数百円したのには本当に驚いた。

 韓国ではキムチ、サンチュ、ニンニク、葉野菜は注文するのではなく、つきだしとして最初から添えられる。これらの副菜は長らく肉の料金に含まれていたが、この20数年で韓国の野菜も高騰。副菜セットを有料にしたり、無駄をなくすために客が食べたい分だけ取るようにしたりする店が増えた。

韓国では葉野菜のセルフサービスも珍しくなくなった