済州で女として生まれたからには誰もが海女になって稼がなければならないという宿命に抗う娘(IU)と、彼女を一途に思う青年(パク・ボゴム)のNetflix配信ドラマ『おつかれさまです』が話題を集めている。そこで、今回は海女つながりで、海女たちが活躍するヒット映画『密輸 1970』を紹介しよう。

 海女の悲哀を描いた『おつかれさまです』や『私たちのブルース』、チョン・ドヨン主演映画『初恋のアルバム ~人魚姫のいた島~』などと違い、本作は生きていくために密輸の片棒を担ぐたくましい海女たちの物語だ。いわば、海女版『悪いやつら』(チェ・ミンシク&ハ・ジョンウ主演)、もしくは海女版『10人の泥棒たち』(キム・ユンソク&キム・ヘス主演)で、キャスティングの妙には注目である。

『初恋のアルバム ~人魚姫のいた島~』に象徴されるように、海女が登場する映画やドラマは牧歌的な作品が多いが、『密輸 1970』は異色

■『密輸 1970』豪華キャストに注目!キム・ヘスの可愛い悪女はもはや十八番

 キム・ヘスと同世代の筆者から見ると、1980年代と1990年代の純情娘役の印象が強いのだが、チョ・スンウ主演映画『タチャ イカサマ師』(2006年)で悪女に扮して以来、イメチェンに成功した人だ。

 映画『10人の泥棒たち』(2012年)での金庫破りの達人役、『国家が破産する日』(2018年)で通貨危機から韓国を救おうとする知的な銀行員役などを経て、演技派としての地位を確立。本作では悪事に手を染めることを厭わない海女をのびのびと演じている。

■人間味のある気丈さが魅力のヨム・ジョンア

 キム・ヘスより2歳若い1972年生まれなので、すでに50歳を超えているのだが、1991年にミスコリア(準ミス)に選抜された美貌は健在。本作では漁船の船長の娘で海女のリーダーに扮している。最初は密輸に消極的なのだが、いつのまにか引き返せないところまで来ているという人間味のある役だ。

 日本でもドラマ化された大ヒット作『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』では、超高級マンションの住人たちから羨望の眼差しを向けられているが、暗い過去をもつ専業主婦を熱演。また、昨年配信された映画『クロス・ミッション』ではファン・ジョンミン扮する家庭的な夫をもつワーカーホリック気味の刑事を好演していた。

■美獣健在!チョ・インソン

 筆者と同じソウルの東のはずれ、江東区の千戸洞(チョノドン)出身なので以前から注目してきた俳優だ。1999年に俳優デビューしているので、もはやベテランなのだが、じつはまだ40代前半(1981年生まれ)である。

 大ヒットドラマ『ムービング』で二枚目健在を確認できたが、ギラッと光るのはやはりの悪の匂いのする役だ。映画『ザ・キング』(2017年)の悪徳検事や『モガディシュ 脱出までの14日間』でのひとクセある大使館参事はハマリ役だった。本作でもくわえタバコでナイフ片手に主人公(キム・ヘス)を脅すシーンは最高にかっこよかった。

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