1話が静なら2話は動。Netflix配信の新作ドラマ『おつかれさまです』は、第2話で視聴者の心を完全につかんだ。舞台は釜山。その立役者は、IUとパク・ボゴム扮する、エスンとグァンシクが泊まった旅館女将に扮したカン・マルグムだ。(以下、一部ネタバレを含みます)
■IU&パク・ボゴム主演、Netflix話題作『おつかれさまです』激動の時代背景
『おつかれさま』の物語は1960年頃の済州で始まる。ところどころでその時代のニュース音声が流れるので、50代以上の韓国人の郷愁を誘う。いや、郷愁だけではない。苦々しい記憶を呼び起こされることも少なくない。
子どもの頃、エスンが学校で級長になれなかったのは、1960年、李承晩(イ・スンマン)が不正選挙によって4度目の大統領になったことを皮肉っている。
また、日本語字幕では省かれているが、エスンとグァンシクが船で釜山に逃げる際、船員に「おまえたち、身分証を見せないならキム・シンジョと見なすぞ」と言われるシーンは、1968年1月に起きた北朝鮮工作員グループによる青瓦台襲撃未遂事件を背景としている。キム・シンジョとはそのグループの生き残りの一人だ。
この時代の空気は、史実をベースにした映画『大統領の理髪師』(ソン・ガンホ主演)や『シルミド/SILMIDO』(ソル・ギョング主演)がよく伝えている。後者に登場する金日成暗殺部隊は、青瓦台襲撃未遂事件に対する報復として秘密裡に編成されたという実話が元になっている。
■本物の釜山弁と豊かな表現力が光る、カン・マルグムの旅館女将
なんとか釜山にたどり着いたエスンとグァンシクは、旅館「南浦荘」に泊まる。その名前からもわかるように、今のチャガルチ市場やBIFF広場辺りにある宿という設定だろう。
「釜山は情があるから」
カン・マルグム扮する旅館女将のやさしい言葉が、疲れた若い二人の心を溶かす。宿代の支払いにも寛容。お腹がすいているだろうとククスや釜山ソジュまで出してくれた。
この人情物語がどうなるかはドラマで確認してもらうとして、「釜山は人情の街」という形容に異を唱える人はあまりいないだろう。
