■息子役にソン・ガンホファン・ジョンミンソル・ギョング……輝かしいオモニ歴

 ナ・ムニは、映画デビュー作『クワイエット・ファミリー』ではソン・ガンホの母。『ラブリー・ライバル』ではヨム・ジョンアの母。『ユア・マイ・サンシャイン』ではファン・ジョンミンの母。『熱血男児』ではユン・ジェムンの母。『あいつの声』ではソル・ギョングの母。『怪しい彼女』ではソン・ドンイルの母。『レッスル!』ではユ・ヘジンの母。『オ!ムニ』ではイ・ヒジュンの母……。華々しいオモニ歴である。

 なかでも必見の母親役は『熱血男児』(2006年)だ。ナ・ムニは全羅道の田舎町のクッパ屋女将チョムシムに扮した。典型的な毒舌ばあさんだ。ふらりと現れた柄の悪い男(ソル・ギョング)に、ヤクザになった息子(ユン・ジェムン)を重ねてしまうが、じつは彼が息子を殺しに来た男であることを知ってしまう。しかし、男も敵役の母親に思慕の情を感じ始め、殺害のタイミングを逸してしまう。

 映画の中盤以降、口汚くののしり合いながらも心を通わせてしまう二人の複雑な表情に胸が熱くなる。ハイライトは干潟で漁をするおばさんたちとの宴会シーン。干潟の風景は一面灰色で憂鬱だが、全羅道らしい風景のひとつだ。

「女は墓に入るまで干潟で泥に浸かって働くんだ。一番の親不孝は子が親より先に死ぬことさ。親を悲しませるようなことだけはしないでおくれ。約束だよ」

 干潟の上の小舟で、遠回しに男を説得しようとするチョムシム。ナ・ムニ、一世一代の名演技である。Netflix『おつかれさま』で描かれる親子の情愛の深さに胸を打たれた人に、ぜひ観てほしい。

辺山半島(全北特別自治道)の南端に位置する茅項(モハン)の干潟
仙遊島(全北特別自治道)の干潟で働くハルモニたち

●配信情報

Netflixシリーズ『おつかれさま』独占配信中

[2025年/全16話]演出:キム・ウォンソク『ミセン ー未生 ー』『シグナル』『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』 脚本:イム・サンチュン『サム、マイウェイ〜恋は一発逆転!〜』『椿の花咲く頃

出演:IU『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』『ホテルデルーナ〜月明かりの恋人〜』、パク・ボゴム雲が描いた月明り』『青春の記録』、ムン・ソリ『私たちの人生レース』、パク・ヘジュン夫婦の世界』、オ・ジョンセサイコだけど大丈夫』、ヨム・ヘラン『マスクガール』、ナ・ムニ『怪しい彼女』、イ・ジュニョン恋するムービー