韓国では、早くも2025年ナンバーワンの作品ともいわれるNetflix配信『おつかれさま』。

 5月5日に開催される第61回「百想芸術大賞」放送部門では、最多8部門にノミネートされた。俳優では、最優秀男優賞にグァンシクの青年時代を演じたパク・ボゴム、最優秀女優賞にヒロインのエスンの青年時代と娘のクムミョンの一人二役を演じたIU、助演男優賞にイカ漁船船長サンギルを演じたチェ・デフンの名が挙がっている。

 だが、個人的に本作で最も心を鷲づかみにされた俳優は、パク・ボゴムが扮する主人公グァンシクの中年期を演じたパク・ヘジュンである。(以下、一部ネタバレを含みます)

■Netflix『おつかれさま』でパク・ボゴム扮するグァンシクの中年期を演じたパク・ヘジュンに注目!

『おつかれさま』の主人公グァンシクという人物に人間的厚みを与えたのは、パク・ヘジュンだろう。

「バックして戻ってこい」と、いつも子どもたちの後ろ盾になる父グァンシク。寡黙で愚直でどこまでも家族想いの男に成り切っていた。

 人気俳優パク・ボゴムから引き継ぐということで、本人は負担もあったそうだが、終わってみれば韓国で“国民的お父さん”の称号を得るほど好評を博した。

 エスンの中年期を演じた実力派俳優ムン・ソリとの息も合っていた。まさにこれぞ韓国の理想の夫婦像だったのではないか。後半で病にかかるシーンでは実際に減量をしたそうで、妻エスンとの場面で見せた切実な演技に涙した視聴者も多かったはず。

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 そんなパク・ヘジュンは、1976年6月14日生まれで、名門校である韓国芸術総合学校演劇院の第2期生。数多くの名優を輩出する劇団「チャイム」の舞台や映画で下積みを積み、2014年の『ミセン-未生-』の課長役で広く知られるようになった遅咲き俳優だ。

 2020年の『夫婦の世界』では史上最悪の不倫夫を演じ、“国民的不倫夫”として大ブレイクを果たしたが、かねてから悪役が多かった。

 大きな注目を集めた映画『ファイ 悪魔に育てられた少年』ではファイを育てた5人の凶悪殺人犯の1人を、筆者が最初に注目した『ドクター異邦人』では祖国の命令なら何でもする北朝鮮工作員を憎々しく演じていた。昨今も、映画『毒戦 BELIEVER』、『The 8 Show ~極限のマネーショー~』で、思わず震えてしまうほどの悪役演技を披露して印象を残している。

 だが、個人的には、本作のグァンシクを演じる前から、パク・ヘジュンの真骨頂は悪役ではないと思っていた。パク・ヘジュンという俳優の奥深さが最も楽しめる作品は、『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』と『アスダル年代記』だろう。