多くの共感を集めているNetflix話題作『未知のソウル』。性格がまったくちがう双子のミジとミレ(パク・ボヨンの一人二役)が、あることをきっかけに互いに入れ替わって生きるという話だが、『涙の女王』や『隠し味にはロマンス』など最近のドラマでよくモチーフになる都会と田舎の対比描写も興味深い。本作では貧しくも生き生きしているミジが田舎で暮らし、スタイリッシュだが疲れ切っているミレが都会で暮らしている。(以下、一部ネタバレを含みます)
■『未知のソウル』で描かれる田舎の風物、円滑なご近所づきあいに欠かせない手づくりジョン、村の集会所とマッコリ宴会
『未知のソウル』第1話の前半では、ミジたちが住む町の描写が秀逸で、少ない場面で韓国の田舎の空気を伝えることに成功している。
ミジが帰宅すると母(チャン・ヨンナム)が床に座って大量のジョン(揚げ焼き)を焼いている。親鳥から餌をもらう小鳥のようにズッキーニのジョンをほおばるミジ。ジョンはお隣のチェサ(法事)のために母が焼いたものだった。こうした近所づきあいの濃さがいかにも田舎らしい。ソウルなどの都会ではなかなか見られなくなっている。
未知のソウル』同様、女優が一人二役を演じた作品に往年の名作映画『初恋のアルバム ~人魚姫のいた島~』がある。時代設定はIU&パク・ボゴム主演ドラマ『おつかれさま』と同じ1960年代。舞台はミジたちが暮らす町よりもっと辺鄙な離島。そこで主人公(チョン・ドヨン)が意中の男子(パク・ヘイル)の気を引くために近所への心遣いを偽装してジョンを焼く微笑ましいシーンがあった。

ミジ(ミレ)を雇うことになった、リュ・ギョンス扮する新米イチゴ農園主のハン・セジン(元ソウルのファイナンシャルプランナー)が初めて登場するシーンには、マウル会館前の縁台でマッコリを飲む農民たちが描かれている。
マウル会館とは村民の集会所のことだ。会議に使われることもあるが、たいてい村のお年寄りの憩いの場となっている。シニアのために特化した施設は敬老堂(キョンノダン)とか福祉会館と呼ばれる。筆者は田舎町の取材をするとき、その地域のざっくりとした歴史や生活感を知るためにかならずマウル会館や敬老堂を訪ねている。

