1人目は、鄭蘭貞を操り、陰謀の糸を引いた文定王后である。彼女は息子が13代王・明宗(ミョンジョン)として即位すると、大妃となって賄賂と私欲に塗れた政治で王朝を堕落させている。『オクニョ 運命の女』ではキム・ミスクが扮していた。

 2人目は金介屎(キム・ゲシ)である。14代王・宣祖(ソンジョ)から重用された女官であった彼女は、その後、光海君(クァンヘグン)を後押しする陰謀の中枢となった。1609年、光海君の兄・臨海君(イメグン)が謎の死を遂げ、1614年には仁穆(インモク)王后の息子・永昌大君(ヨンチャンデグン)が殺された。これらの血塗られた事件の背後には、常に金介屎の冷酷な影があった。

華政(ファジョン)』(2015年)でキム・ヨジンが、『ポッサム〜愛と運命を盗んだ男〜』(2021年)ではソン・ソンミが金介屎に扮していた。

 3人目は貞純(チョンスン)王后である。21代王・英祖(ヨンジョ)の正室でありながら、英祖とその息子・思悼世子(サドセジャ)の不和を助長し、世子の人格を歪めて父に伝えたという証言がある。

 さらに、思悼世子の子である正祖(チョンジョ)を毒殺した疑いも根強い。正祖の死後、息子・純祖(スンジョ)が即位すると、貞純王后は摂政として政治を掌握し、正祖が進めた改革を次々に潰した。

 また、政敵にキリスト教徒が多いという理由で、苛烈な迫害を行ったことでも知られる。数々の陰謀と冷酷さを重ねた貞純王后こそ、朝鮮王朝における最も冷たい悪女だったかもしれない。