Netflix配信中の『暴君のシェフ』の主役キャラがとてもいい。イム・ユナ(少女時代)が扮するヨン・ジヨンは、パリでミシュラン3つ星を獲得したレストランのヘッドシェフ。そして、イ・チェミンはわがまますぎる暴君イ・ホンを演じている。2人が繰り出す「ありえないコメディとファンタジー」が超人気の秘訣になっている。(以下、一部ネタバレを含みます)
■Netflix『暴君のシェフ』で描かれる王宮の人間模様、実際の歴史ではどうなっているのか?
タイムスリップを使ったドラマでは、時空を超える場面が大きなポイントになっているが、『暴君のシェフ』では日食と古書が活用されていた。
フランスの料理大会で優勝したヨン・ジヨンは、歴史学者の父から古書『望雲録』を預かった。韓国行きの飛行機に乗ったとき、隣席の人からコーヒーをかけられてしまい、古書も濡れてしまった。トイレで修復作業をしている間に日食の瞬間となり、一気に彼女の身体が時間旅行に巻き込まれて、朝鮮王朝時代にまぎれこんだ。
そこは、まさに暴君イ・ホンが狩りをしている真っ最中。こうして、朝鮮王朝時代の国王と現代の天才シェフが劇的に遭遇することになった。
残虐な国王として恐れられているイ・ホンは、驚異的な味覚を持つグルメでもあった。そんな彼にジヨンが提供する料理は垂涎の逸品ばかり。このドラマで作られるメニューの1つ1つに珠玉の物語があり、視聴者に目で満足感を味わえるようにしてくれる。
イ・ホンの舌を完全に支配したジヨンは王宮に連れていかれて、水刺間(スラッカン/王室専用の調理場)のトップになる。水刺間には腕自慢の男性料理人が多いのだが、国王に指名された上に料理大会にも勝利したジヨンには、誰も逆らえない。彼女のほうも、現代社会に戻りたいという切実な願いがあるので、与えられた地位を利用して必死にチャンスを狙っていく。
そういう展開の中で、王宮の人間模様も詳しく描かれている。鍵を握るのがインジュ大王大妃(ソ・イスク)である。
彼女はイ・ホンの祖母。かつて夫だった国王が亡くなり、後を継いだ息子も早死にしている。それによって、絶大な権力を握ることになったのだが、彼女には隠したい過去があった。それは、息子の妻であった王妃を死罪にまで追い込んでいることだ。その真相が、『暴君のシェフ』の隠し味になっている。
その王妃の息子であるイ・ホンは、インジュ大王大妃のおかげで国王になれたのだが、母の死の理由を知ることに異様に執着している。その流れは、史実の「燕山君(ヨンサングン)と仁粋(インス)大妃」の関係を彷彿させる。