リュ・スンリョン主演ドラマ『パイン ならず者たち』第5話は、財宝を海から引き揚げんとするクセモノたちがいよいよ木浦(モッポ)に集結。まさに役者がそろった感じで、一攫千金を狙っての神経戦が繰り広げられるが、1970年代後半という時代を感じさせる数々の風物も見ものだった。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『パイン ならず者たち』第5話の冒頭に流れたプロレスの試合映像は?

 本作の第5話はタイトルが「プロレスラー」となっているように、冒頭、キム・イル(1929年~2006年)選手の試合映像が流れる。1958年に韓国から日本に密入国して力道山に弟子入り。ジャイアント馬場やアントニオ猪木の兄弟子に当たり、大木金太郎のリングネームで知られている人だ。日本で学んだプロレスを韓国に根付かせた彼はまさに1970年代の国民的英雄であり、プロレスは人気スポーツのひとつだった。

 2025年前半の話題を独占したドラマ『おつかれさま』でも、クムミョン(IU)がパッチギ(頭突き)で悪徳旅館女将(カン・マルグム)を退治する若き母(IUの一人二役)をキム・イルにたとえていた。

 キム・イルは木浦の南東方向にある高興郡の南端、居金島(コグムド)の出身だ。力道山の日本プロレス、アントニオ猪木の新日本プロレスを経て、1970年代後半、ジャイアント馬場の全日本プロレスに参戦したときは、チョンジャグァン(程子冠)と呼ばれる民族帽子をかぶって入場し、国内外の同胞たちを喜ばせた。また、イ・ソンミンキム・ジョンス、チョ・ヨンジン、ソン・ジェホなど多くの俳優が演じたパク・チョンヒ(朴正煕)大統領(任期1963年~1979年)の支援を受けていたことでも有名だ。

 なお、キム・イル選手の試合映像は、ソン・ガンホの映画初主演作『反則王』の冒頭でも見ることができる。

キム・イル(大木金太郎)の生家がある居金島の街角

■1970年代を代表する青春映画のポスターも

 木浦の巡査部長(イ・ドンフィ)やヤクザ(ユンホ東方神起)、グァンソク(リュ・スンリョン)、会長夫人(イム・スジョン)、釜山からキム教授(キム・ウィソン)を追ってやってきた元プロレスラー(クォン・ドンホ)らが雨の中、高架下でもめているとき背後の壁に貼られていたのは、1970年代を想起させる常套手段である青春映画『高校ヤルゲ』(1977年)のポスターだ。

 同作は2008年と2009年にリバイバル上映されるほど人気があった。韓国の山口百恵と呼ばれ1980年代を代表する女優チョン・ユニや、Netflixドラマ『エマ』の元ネタになっている映画『愛麻夫人』に出演したハ・ミョンジュンが教師役で出ていたことでも有名だ。

ソウル西大門駅近くにある敦義門博物館マウルに再現された映画館には『高校ヤルゲ』の絵看板が