Netflixで今秋ヒット中の『匿名の恋人たち』。主演は小栗旬とハン・ヒョジュで大人のラブロマンスを繊細に描いている。この中で、ハン・ヒョジュが演じるのは視線恐怖症のハナ。人の目をまともに見られないという女性の役をハン・ヒョジュはひたむきに演じている。そんな彼女のキャリアにおいて印象的だったことを振り返ってみる。

■Netflix人気ロマンス『匿名の恋人たち』で輝くハン・ヒョジュの魅力とは?巧みな日本語の演技も話題!

 最初は落胆から始まった。それは2005年のことだ。筆者は『春のワルツ』(2006年)の出版物を編集する役目を負っていた。当初は著名な韓流女優が主役に起用されたのだが、理由があって急に降板することになった。代役として選ばれたのがハン・ヒョジュであった。当時の提供写真を見ると、華がないという印象が強く、落胆が隠せなかった。

「これで主役が務まるのだろうか」

 そう心配した。なんといっても、『冬のソナタ』(2002年)で名声をほしいままにしたユン・ソクホ監督が手掛ける四季シリーズの最終作品が『春のワルツ』。非常に期待が高まっていただけに、1987年生まれの新人女優ハン・ヒョジュの起用はリスクが大きかった。

 しかし、彼女の潜在力は見事に不安を打ち消した。序盤こそ表現力が不足している場面もあったが、徐々に慣れていくと素晴らしい演技力を発揮するようになった。後半に入ると堂々たる主役女優で、華がないとは絶対に言わせない雰囲気があった。

 こうして『春のワルツ』はハン・ヒョジュをスターダムにのし上げた。ドラマ自体はヒットしなかったが、ハン・ヒョジュが巣立ったという意味で記念碑的な作品になった。

 2009年、『華麗なる遺産』でハン・ヒョジュが一気に飛躍した。このドラマは最高視聴率が47%を超える国民ドラマとなり、ハン・ヒョジュの生き生きとした演技が高い評価を受けた。

 その末にハン・ヒョジュは『トンイ』(2010年)の主役を射止めた。「韓国時代劇の巨匠」と称されるイ・ビョンフン監督は主演女優の選抜に厳しいと言われていたが、ハン・ヒョジュは見事に名監督の期待に応えた。