■淡白な主菜とアクセントになる副菜、バランスが絶妙!
筆者は多くの日本の人をこの店に案内したが、喜ばなかった人は皆無と言ってよい。プゴクッをすすりながら松重豊が言っていたように、卵と豆腐の入った、あっさりした干し鱈スープは、さわやかな水キムチ、味のアクセントになるキムチ、オイジ(キュウリの漬物)、ニラやネギの和え物とのバランスがよい。
韓国は朝鮮戦争(1950~1953)直後、世界最貧国と言われるくらい貧しかった。そんな時代には味のはっきりした漬物ひとつでごはんを食べるしかなかった。また、1960年代から経済成長が始まると、人々は長時間労働を強いられ、辛くてしょっぱいおかずでごはんをもりもり食べる必要があった。唐辛子の効いた食べ物が発達したのはそのせいもある。
しかし、2000年代に入って一定の豊かさを獲得し、グルメ志向が発達してくると、食の嗜好にも変化が生じる。この十数年、平壌冷麺やプゴクッのような淡白で繊細な料理が脚光を浴びたのは、過去の辛い物コンプレックスからの脱却と見ることができるだろう。
プゴクッはヘジャンクッ(二日酔い解消スープ)として紹介されることが多いが、酒を飲まないに人にも喜ばれる料理である。「武橋洞プゴクッチプ」の毎日のような行列は意外と回転が速いので、臆せず食べに行ってもらいたい。
●配信情報
Netflix『隣の国のグルメイト』独占配信中
[2025年] 出演:ソン・シギョン、松重豊

