Netflixグルメ番組『隣の国のグルメイト』シーズン4の9話では、バラード歌手ソン・シギョンが『孤独のグルメ』の松重豊を京畿道の南漢山城(イ・ビョンホン主演映画『天命の城』の原題)に案内し、タッペクスッという鶏料理を食べさせた。
鶏料理と聞くと、日本からの旅行者はまずタッカンマリやサムゲタンを思い出すかもしれないが、タッペクスッは都市に住む韓国人が週末、空気のよいところへ出かけたときに食べたくなる鴨、ウナギ、豆腐などと並ぶ野趣のある料理だ。
■鶏の風味を生かした淡白な味付けのタッペクスッ、生薬が加わることも
鶏を丸ごと煮込んだタッペクスッは、日本で言う鶏の水炊きに近い。鶏の水炊きというと日本の人はタッカンマリを思い出すだろうが、タッカンマリはソウルのローカルフードなので、全国的にはタッペクスッのほうがよく知られている。タッカンマリのように煮汁とともに鍋物として出されることもあれば、煮込まれた身だけが出されることもある。
タッカンマリはニンニクを効かせたスープが一般的だが、タッペクスッは鶏そのものの風味を生かして淡白に味付けされることが多い。
ソン・シギョンが松重豊を連れて行った店では、オムナム(ハリギリ)の枝が入っていたように、土地や店によって鶏といっしょに煮込まれる素材は変わる。ファンギ(キバナオウギ)やトドッ(ツルニンジン)、高麗人参などの生薬を入れる店も多い。
■ソ・ジソブも訪れた江原道、山奥の店で出合ったタッペクスッ
筆者が食べたなかで印象深かったもののひとつが、冬の江原道、38度線に近い町、楊口(ヤング)の食堂で出合ったタッペクスッだ。
楊口の市街地からバスに乗ること30分。「タバコ屋」というとぼけた名前のバス停で降り、雪に半分埋もれたような店に入っていくときから料理に対する期待は高まっていた。
あとで気づいたのだが、この店は『ごめん、愛してる』『主君の太陽』などで知られる俳優ソ・ジソプが2010年に出した旅行エッセイで紹介していた店「チョンスッコル」だった。