金浦空港に行く前に入ったサウナの雑魚寝スペースには、いくつも輪があった。皆、サウナ着に着替えているから、もう風呂やサウナには入ったのだろう。中央に菓子やペットボトルのお茶が置かれている。

 風呂に入った僕は、雑魚寝スペースで体を横にしようと荷物を整理していると、輪のなかにいたおじさんが声をかけてきた。訊くとこのサウナから歩いてすぐのところに家があるのだという。

「いま集まっているのは、そのご近所グループですよ。夕飯を食べ終えてここに集まってくる。井戸端会議のようなもんです。毎週、土曜日の夜はここに集まる。いろんな話をして適当に寝る。サウナは暖かいからよく眠れるんですよ。冬は人数も増えるよ。疲れがとれるからね」

 その感覚がよくわかった。広いスペースの暖かさは、ひとつの部屋の暖かさと質が違う。湿度も同様で、全体の湿度が高いから心地いいのだ。よく眠れるという感覚がよくわかる。ソウルの人たちは、サウナで暖かさと同時に湿度を体にとり込んでいるようにも思うのだ。寒くて乾いたソウルの冬のなかで暮らしていると、体が湿度をほしがるといった感じだろうか。

 僕もことッと寝てしまった。目覚ましで朝の4時に起きたが、空港には行きたくない気分だった。心地いい湿度のなかでまどろんでいたかった。