日本でブームになっているマーラータン。ルーツは中国の四川省。唐辛子の辛さに加え、しびれるような刺激の花椒(ホワジャオ)が入った刺激の強い料理だ。はじめて口にすると、「うッ」となるほどの辛さ+しびれだが、これが癖になってしまう。

■日本でブームの辛いマーラータン、ソウルの専門店で食べてみる

 僕はマーラータンの洗礼を四川省で受けた。四川省の料理は「川味」とも書かれ、さまざまな料理に唐辛子と花椒がたっぷり入る。日本人は辛い料理というとタイ料理やメキシコ料理を思い浮かべるが、中国料理のなかには、その辛さをはるかにしのぐものが少なくない。その双璧が四川料理と湖南料理である。

 日本でマーラータン人気を支えているのが、その注文スタイルだともいわれる。具材をビュッフェスタイルで選び、それを店は麺料理に仕立ててくれる。このスタイルが生まれたのは北京だといわれる。四川省のマーラータンは、北京で具材ビュッフェという注文スタイルが加わった。

 この具材ビュッフェが定着したのが、コロナ禍前の韓国だった。それが日本に伝わった。日本の店のなかには、マーラータンを韓国料理のように出しているところもあるという。

 ならばソウルで……。地下鉄の鐘路3街駅に近いマーラータン専門店に入ってみた。

 店に入ると、具材を入れた容器が並ぶコーナーが目に入った。脇に金属製のざるもある。好みの具材をざるに入れようとしたが、種類が多いから迷ってしまう。

 ソウルの人たちは好みの具材が決まっているのかもしれないが、マーラータン初心者の僕は、どんな具材が合うのかという想像力が乏しいから、ビュッフェコーナーの前で悩んだ。結局、野菜、エノキダケ、フィッシュボール、ウインナーをざるに入れた。

ソウルのマーラータン専門店。具材はここから選ぶ。なんなのかわからないものもあった

 麺の種類も豊富だった。さまざまな太さの麺がある。韓国らしいのは、そのなかにインスタント麺もあることだった。韓国では鍋料理の〆にインスタント麺を投入することがよくある。韓国の人はこの麺が大好きで、国民食のひとつではないか……と思えるほどだった。僕はそこでも悩んだが、幅の太い米麺風の麺を選んだ。なんとなくマーラータンに合うような気がしたからだ。

 支払いはタッチパネルだった。日本語に変換して、さて……という段になって困ってしまった。どのボタンをタッチしても先に進まないのだ。機械の前で立ち尽くす姿を見かねたのか、厨房にいた若い女性が出てきてくれた。スマホの翻訳で、具材が入ったざるを秤の上に置くように教えてくれた。それで先に進むようだった。

 そこからはスムーズだった。辛さを選ぶ画面が出てきた。どのくらいの辛さなのかわからず、中レベルの「2」を選んでみた。すると女性店員がスマホの日本語を見せてくれた。

「とても辛い」

 彼女の指示でレベルを「1」にさげた。つづいて画面に料金が表示された。1万1506ウォン、約1210円ほどだった。