ソウルの繁華街、明洞の復活……コロナ禍が明け、明洞がめざしたものは、落ち込みつつあった売りあげをどう復活させるかだった。
コロナ禍まで、明洞は外国人向けの街として名をはせていた。とくに日本人の後で明洞にやってきた中国人のパワーは圧倒的だった。資金力が違ったという。転売目的の中国人も多かったといわれるが、人気商品のまとめ買いの数は、日本人とは桁が違っていた。
■ソウルの明洞に新しくできたオリーブヤング、再オープンしたユニクロ
外国人向けの街・明洞は、そういった外国人の動きに敏感に反応する。両替店が増え、コスメ店の前には中国語が躍っていた。
そんな様子を見ていた韓国の人たちは、しだいに明洞から足が遠のいてしまう。韓国でも一気にシェアを広めたネット通販がそこに追い打ちをかけていた。そのなかから、ソウルの人たちの間では、「明洞は高い」という印象が広まっていく。外国人にとっては安く映っても、ソウルの人たちの目はごまかせない。
IT系の会社に勤める韓国人は、その先につづく影響をこう説明してくれた。
「明洞は高いっていう言葉は、瞬く間に世界に広がっていったんです。そこで海外の人たちが走ったのが、ネット通販で韓国グッズを買うこと。ソウルにやってくるのは、ネットでは売っていないものや、ネットで買うと高くなるもの。それもどこの店ってはっきりわかるから、そこに直行する。あえて明洞に行く必要がなくなってきたんです」
それはどの国でも起きていることだった。僕はしばしばバンコクに出向くから、知人の女性から、買い物の依頼が入ることが多い。その品はどれも日本では高かったり、入手できないものだった。似たようなものはネット通販や日本の店舗でも手に入るが、あるグレードになると手に入らないといったものが多い。単に商品名だけを耳に買うことができる世界ではない。神経を使う。いつもその商品の画像や商品データを送ってもらうようにしている。そうしないと、間違ったものを買ってしまうことになる。
明洞は外国人に特化していったから、その影響が如実だったのだろう。
そこで明洞の人たちは、韓国の人たちに戻ってきてもらう道を選ぶ。時間は少しかかるかもしれないが、明洞復活にはその道しかないと……。
そこで鳴り物いりでオープンしたオリーブヤングの「セントラル明洞タウン」とユニクロ。訪ねたソウル在住日本人は、「いままでのオリヤンやユニクロとはどこか違う」といった。それが韓国人に戻ってもらう秘策なのだろうか。
両店に同行してもらった。
まずオリーブヤング。地上3階のビルがすべてオリーブヤングだ。入った直感は広いということだった。
「そうでしょ? オリーブヤングというと駅に近い中規模店が多い。商品がぎっしり陳列されていて、通路は狭いから、しゃがんで商品を見ようとすると後ろの人に触っちゃう」
セントラル明洞タウンはそれがない。外国人はパワーで店内を動くから気にならないのかもしれないが、ソウルの人には抵抗感があったのだろうか。
食品コーナーに広いスペースをとっていた。オリーブヤングだから健康系食品やサプリが多いのだが、それも見やすく展示されている。K-フード、インナーケアと呼ばれる品々だ。単価が安いから明洞では敬遠されがちだったが、そこをあえて充実させている。これが韓国人向けということだろうか。