韓国映画『ハイファイブ!』(10月16日より日本公開)は、1人のドナー(医療目的の臓器提供者)から、それぞれ心臓、肺、腎臓,肝臓、角膜を移植され、どういうわけか超能力を得てしまった5人が、万能の神になろうとする新興宗教の教祖と戦う斬新なヒーロー・エンターテインメントだ。
■映画『ハイファイブ』超能力を得た小市民が巨悪と戦う背景にあるもの
『ハイファイブ!』は、善玉にラ・ミラン、アン・ジェホン、ユ・アイン、イ・ジェイン(父親役はオ・ジョンセ)、キム・ヒウォン。対する悪玉にパク・ジニョン(GOT7)、シン・グ、チン・ヒギョンという豪華過ぎるキャストが見ものだ。さらに、キャラクター設定や音楽の使い方にもセンスを感じる良作である。
本作をはじめ、リュ・スンリョンらが主演した大ヒット作『ムービング』、パク・ウンビン主演『ワンダーフールズ』、チャン・ギヨン主演『ヒーローではないけれど』、キム・ダミ主演『The Witch 魔女』、リュ・スンリョン主演『サイコキネシス 念力』など、ここ数年、超能力もののドラマや映画が目立つのは、今の韓国の世相と無縁ではないだろう。
『ハイファイブ!』の5人は臓器移植を受けた健康に不安のある人たちだし、『ワンダーフールズ』でパク・ウンビンが演じた主人公は余命宣告を受け、すさんだ暮らしをしている女性だった。
『サイコキネシス 念力』でリョ・スンリョンが演じた主人公は薄給の警備員で、市場で働く娘(シム・ウンギョン)を脅かす地上げ屋に立ち向かう。『The Witch/魔女』でキム・ダミが演じた主人公は子供の頃に記憶を失い、酪農を営む夫婦に拾われて育った。
こうした作品を観てカタルシスが得られるのは、超能力を得て巨悪と戦うのが社会的弱者、小市民だからだ。その背景には今の韓国の苛烈な競争、格差による閉塞感があるだろう。
■胸のすくような電動カートの爆走シーン
『ハイファイブ!』の悩み多き小市民超能力者たちは、アクションやギャグで観る者に爽快感を与えてくれる。
その最たる場面が、宗教団体の魔の手を避けるべく、怪力の超能力少女(イ・ジェイン)が押すヤクルト販売の電動カートで4人が逃走するシーンだ。背景はセピアがかったソウル旧市街の街並み。音楽は1987年の世界的大ヒット曲、リック・アストリーの『Never Gonna Give You Up』。
2011年に740万人近くを動員した『サニー 永遠の仲間たち』で、1980年代に対する憧憬を隠さなかったカン・ヒョンチョルらしい演出である。ラ・ミラン、ユ・アイン、アン・ジェホン、イ・ジェイン演じる清貧の小市民の面目が躍如とした瞬間だ。