今年の夏、ひとり用ピンスをよく食べたという知人の女性はこういう。
「知り合いに声をかけてピンスを食べようなんていう段どりを組む気温じゃなかったんですよ。外に出ると、気が遠くなるぐらい暑い。カフェに入って、冷たいドリンクじゃ火照りが消えない気がしてピンスを食べたくなる。ひとり用をつくってくれて助かりました。これまでのピンスは量が多いから、さすがにひとりじゃ頼めなかったから」
冒頭に紹介した、仕事の途中にパッピンスを毎日食べたというイラストレーターのPさんもも似ていた。彼が食べていたものも、いってみればひとりピンスである。
ソウルではひとり昼食がトレンドにもなっていた。韓国のビジネスマンやOLの間では、ひとりで昼食を食べることへの抵抗感があった。「きっと社内の人間関係がうまくいっていない」と見られることを気にする人が多かったからだという。
打ち合わせでソウルに向かい、ひとつの会社を訪ねる。終わったのが昼どきになると、昼食でもという話になることがよくあった。そんなときも、打ち合わせに加わっていない人もぞろぞろと集まり、一緒に食事をとることが多かった。部外者にしてみたら、その会社やソウルのいろんな話が聴けて楽しかったが、そこには社員たちのさまざまな思いが錯綜していたのだろう。
そんななか、気楽なひとり昼食派が少しずつ増えていく。
ビジネス街では、ひとり昼食用の焼肉や麺屋が一気に増えていった。客は壁に向かって食事をする店内レイアウトで、皆、スマホを見ながら箸を動かしていた。
そんな流れも、ひとりピンスを後押ししたのかもしれない。いや、それ以上に今年のソウルは暑かったのか。しかしひとりピンスは気軽だから、食べる回数が増える。その結果の「太った」という夏の置き土産……。
そんなソウルのいまを、夏の終わりに入ったカフェで目にすることになる。(つづく)

