■アシカ人間にアイアンマンまで!?
ここまではギリギリ許せる範囲ではある。しかし、海兵隊のダイバーをイルカやアシカのハイブリッドにしようという研究は、まさにショッカーの改造人間だ。
イルカやアシカは深海へ潜る際に極度に酸素消費量を抑えることができるが、これを海兵隊のダイバーに応用し、低酸素状態で活動できるように肉体を改造するという……人権や宗教や社会常識等々でいろいろとアウトな研究である。
もちろんアイアンマンのようなパワードスーツの研究もDARPAは行なっていて、ハーバート大学ヴィース研究所とDARPAの「ウォーリアー・ウェブ (Warrior Web)」プロジェクトで開発中のパワードスーツは、映画「アイアンマン」のような外骨格型強化服ではなく、服の下に装着する。
米軍の歩兵の装備は80キロにもなるため、行動が著しく制限されている。装備の重量を相殺し、膝や腰への負担を減らすのが目的で、薄型ながら筋力をほぼ2倍に強化できるそうだ。
■攻殻機動隊が現実のものに!
DARPAの「NESD(Neural Engineering System Design=神経工学設計)」プログラムは、脳にコンピュータを組み込むことを目的としている。いわば、インターネット人間を作ろうというのだ。
脳とコンピュータをつなぐといっても簡単にいくとは思えないが、NESDの計画では0.15ミリメートル以下の「ニューログレイン(神経粒)」と名付けた超小型センサーを脳の中にばらまくのだそうだ。
ニューログレインは脳神経の信号をモニターし、データを送信する。それを頭につけたセンサーでキャッチし、コンピュータで解析する。これにより脳がどのように情報をやり取りし、どんな言語を使っているのかがわかるという。
そこから脳とコンピュータをつなぐアルゴリズムを開発、将来は脳とコンピュータをシームレスに接続する。まさに攻殻機動隊の世界だ。
さらに、脳の研究はすでに脳波だけで戦闘機を操縦するところまで来ているという。SFでは古典的な設定だが、実際にはどうやっているのだろうか──?
■殺し合いのため発展する科学って…
2015年9月6日、DARPAとピッツバーグ大学医療センターは両手両足の自由が利かず、ロボットアームを使ってもらっていた被験者にF35 戦闘機のシミュレーターを脳波で動かしてもらった。これが成功すれば、理屈上、脳で考えるだけで戦闘機を操縦できることになる。
そもそも、脳波によるロボットアームの操作は精度が高く、食事や読書の補助をなんなく行えるレベルだそうだ。食事や読書ができるなら、戦闘機だって……とだいぶ飛躍している気もするが、実験は成功。シミュレーター上とはいえ、戦闘機は彼女の脳波によって複雑な地形を飛び回ったという。
教科書に載らないところで、最先端の技術が生まれ、殺し合いのために利用されるという事実には、なんとも言えない後味の悪さがある。
軍事が科学の発展を後押しすることは間違いない。人間はどういうわけか人間を殺すことに異常に熱意と知性を使う生き物なのだ。これは人間の業なのだろう。